イギリスで研修を受けた医師や医学生においては、非白人は白人に比べ学業成績や臨床能力が劣るという民族間差がみられることが、ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジのKatherine Woolf氏らによる調査で明らかとなった。イギリスの医学生や研修医の3分の1は少数民族の出身者だという。2002年に報告された医学部合格の関連因子に関するレビューでは、少数民族出身の受験生は標準よりも成績が劣ることが示されているが、この解析に含まれたイギリスの報告は1編のみであった。イギリスの大学や国民保健サービス(NHS)は、学生の入学状況や学業成績の向上、職員の採用状況や職能向上につき民族別にモニターすることが法的に義務づけられている。BMJ誌2011年3月12日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。
学業成績と民族との関連を解析
研究グループは、イギリスで研修を受けた医師や医学生の学業成績と民族との関連について系統的にレビューし、メタ解析を行った。
PubMedなどのオンラインデータベース、検索エンジンであるGoogleやGoogle Scholar、医学教育関連の専門誌や学会抄録を調査してデータを抽出した。
医学生およびイギリスで研修を受けた医師の学部や大学院における学業成績を民族別に定量的に評価した報告をレビューの対象とした。イギリス以外の国での評価やイギリス以外の国でのみ研修を受けた場合、自己申告のみによる評価、サンプリングバイアスが明らかな場合、民族やアウトカムの詳細の記述が不十分な報告などは除外した。
イギリスの医学教育、高等教育全体の課題
22編の報告に含まれた2万3,742人のメタ解析では、非白人は白人に比べ学業成績が劣ることが示された(Cohen’s d=-0.42、95%信頼区間:-0.50~-0.34、p<0.001)。
学部生、大学院生、臨床能力、合格/不合格アウトカムなどの個別の評価や、白人とアジア人の比較に関するメタ解析においても、同様の傾向が同程度に認められた。すべてのメタ解析に不均一性がみられた。
著者は、「個々の医学校や試験のタイプ、また学部や大学院において、学業成績の民族間差が広範に認められた」と結論し、「この差は長期間持続しているため、非典型的で局所的な問題として片付けることはできず、イギリスの医学教育、高等教育全体に影響を及ぼし得る課題と捉えるべきである。この問題を追跡し、原因のさらなる調査を行うにはより詳細な情報が求められ、そのためには公平かつ公正な医師の研修法や評価法の確立が必須である」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)