韓国・峨山病院心臓研究所のSeung-Jung Park氏らによる、非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者を対象とした無作為化試験の結果、シロリムス溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の重大心臓・脳血管イベント発生に関して、冠動脈バイパス術(CABG)に対する非劣性が証明されたとの報告が発表された。ただし「設定した非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできないものである」と補足している。本試験「PRECOMBAT」は、非保護左冠動脈主幹部狭窄症へのPCIが徐々に増えているが、CABGも治療の選択肢とみなされるのではないかとして行われた。NEJM誌2011年5月5日号(オンライン版2011年4月4日)掲載より。
600例の被験者を無作為化、PCIの非劣性マージンは絶対差7ポイントと設定
PRECOMBAT試験は、韓国厚生省委託のもと13施設で行われた前向き非盲検無作為化試験。18歳以上の安定狭心症、不安定狭心症、無症候性心筋虚血または非ST上昇型心筋梗塞の診断を受け、新規に50%以上の非保護左冠動脈主幹部狭窄症が認められた患者が適格とされた。
2004年4月~2009年8月の間に登録された1,454例のうち600例の被験者が無作為に、シロリムス溶出ステントを用いたPCI群(300例)かCABG群(300例)に割り付けられた。
主要エンドポイントは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントの複合(全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中と虚血性標的血管血行再建)とし、副次エンドポイントは、主要エンドポイント項目(死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合)とステント血栓症とした。
非劣性マージンは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントのCABG群発生は13%とみなし絶対差7ポイントまでとした。
解析は、1年時点のイベント発生率が予想を下回ったので2年時点の比較も行われた。
1年時点絶対差2.0ポイント、2年時点でもPCIの非劣性が認められたが……
結果、主要エンドポイントは、PCI群26例(累積発生率8.7%)、CABG群(6.7%)でリスクの絶対差は2.0ポイント(95%信頼区間:-1.6~5.6、非劣性P=0.01)だった。
2年時点の主要エンドポイント発生は、PCI群36例(12.2%)、CABG群24例(8.1%)で、PCI群のハザード比は1.50(95%信頼区間:0.90~2.52、P=0.12)だった。
また、2年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合発生は、PCI群13例(4.4%)、CABG群14例(4.7%)、PCI群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.43~1.96、P=0.83)であり、虚血性標的血管血行再建は、PCI群26例(9.0%)、CABG群12例(4.2%)、PCI群のハザード比2.18(95%信頼区間:1.10~4.32、P=0.02)だった。
Park氏は「PCIのCABGに対する非劣性が示された。しかし非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできない」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)