女性の重大健康問題、骨盤臓器脱には、メッシュキット修復術か膣壁形成術か

提供元:ケアネット

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公開日:2011/05/25

 



骨盤臓器脱の修復法として近年急速に広がった、標準化されたトロカールガイド下ポリプロピレン製メッシュキットを用いた経膣的修復術について、従来の膣壁形成術と比較検討した結果、短期的な治療成功率は高かったが、手術合併症および術後の有害事象発生率も高いことが明らかにされた。スウェーデン・Danderyd病院産婦人科のDaniel Altman氏らによる多施設共同並行群無作為化試験による。骨盤臓器脱は女性を悩ます健康問題の一つとして世界的に重大視されるようになっている。米国では年間30万件以上の前膣壁形成術が行われているが再発リスクが40%以上に上り、革新的な術式への関心が高まっていた。そのような中で急速に広がったのが、従来の手法とは全く異なる、メッシュキットで膣壁を吊り上げるという術式だが、これまで無作為化試験による両者のアウトカム検討のデータがなかったという。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。

主要アウトカムはメッシュキット修復群60.8%、従来群34.5%




試験は2007年12月~2008年12月、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、デンマークの53病院から被験者を募り行われた。1,685例がスクリーニングを受け、前膣壁脱(膀胱瘤)を有する389例が無作為に、メッシュキット修復群(200例)か従来の膣壁形成術群(189例)に割り付けられた。

主要アウトカムは、術後12ヵ月時点の、骨盤臓器脱を定量化したPOP-Qシステムによる客観的解剖学的所見がステージ0(脱なし)または1(前膣壁の位置が処女膜より上1cm超)と、膣膨隆症状の主観的な消失との複合とされた。

結果、1年時点の主要アウトカム発生は、メッシュキット修復群60.8%、従来群34.5%で、メッシュキット修復群のほうが有意に多かった(絶対差:26.3ポイント、95%信頼区間:15.6~37.0)。

メッシュキット修復群は手術時間が長く、術中出血多く、術後新たな腹圧性尿失禁発生も




一方で、メッシュキット修復群のほうが、手術時間が長く(P<0.001)、手術時の出血の割合も高かった(P<0.001)。

膀胱穿孔率は、メッシュキット修復群3.5%、従来群0.5%だった(P=0.07)。術後に新たに発生した腹圧性尿失禁の割合はそれぞれ12.3%、6.3%だった(P=0.05)。

また追跡期間中、メッシュキット修復群186例のうち3.2%で、メッシュの露出を修正するための外科的処置が行われた。

(武藤まき:医療ライター)