女性結核患者の検出率向上に簡便な喀痰採取ガイダンスが有効

提供元:ケアネット

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公開日:2007/06/21

 

回避可能とされる成人死亡原因の26%を結核が占めるパキスタンでは、結核が疑われる女性の喀痰塗抹検査の陽性率が男性に比べて低く、女性結核患者の検出に支障をきたしているという。この男女差を生む主な原因は、痰の代わりに唾液を提出するなど女性の喀痰標本の質の低さにある。その背景には結核の喀痰検査に関する正しい知識の不足のほか、とくに人前で痰を吐くことへの抵抗感など文化的要因があると考えられる。そこで、London School of Hygiene and Tropical MedicineのMishal Sameer Khan氏らは、簡便な喀痰採取ガイダンスを用いた無作為化試験を実施。Lancet誌6月9日号に掲載された論文では、喀痰標本の質が改善され、検査陽性率が向上したと報告している。

喀痰採取ガイダンスの有無で比較する無作為化試験


対象は、2005年5~7月に、ラワルピンディ市(パキスタン)の結核センターを結核の疑いで受診した3,055例(女性1,494例、男性1,561例)。これらの症例が、喀痰標本の提出前に簡便な喀痰採取ガイダンスを受ける群と、特別な指導は受けずに標本を提出する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、喀痰塗抹検査陽性女性のうちガイダンスを受けない群と受けた群の比とした。

ガイダンスを受けた女性は、受けない女性に比べ喀痰塗抹検査陽性率が有意に高く[リスク比:1.63(95%信頼区間:1.19-2.22)]、検査陽性例の検出率が有意に優れていた(13% vs 8%、p=0.002)。また、ガイダンスを受けた女性では唾液の提出が有意に減少し(p=0.003)、早朝に採取した標本の提出が有意に増える(p=0.02)など、標本の質的な改善も達成された。

低所得国の結核対策における男女間差の解消に有効か


喀痰採取ガイダンスは簡便で有効性が高く、費用効果に優れた方法である。Khan氏は、「低所得国では、結核抑制策における男女間差の解消に有効な可能性がある」と指摘している。なお、男性ではガイダンスによって検査陽性率や標本の質が改善されることはなかったという。

(菅野 守:医学ライター)