ウォーキングのすすめはどのように行えば最も効果的なのか。6月9日付BMJ誌で発表されたDavid Ogilvie氏らの報告によれば、これだと言えるエビデンスのある指導方法は、現時点ではなさそうだという。
ウォーキング指導効果について文献レビュー
手軽だが運動効果に優れていると言われるウォーキングの指導を、最も効果的に行う方法について、Ogilvie氏らは、個人レベルによるものから、職場、学校、地域など各集団レベルに対して行われた指導評価の報告を再検証した。
レビュー作業は、ウォーキングの指導と効果に関する1990年以降に発表された論文を、25のデータベース、さらに言語を問わず独自にウェブサイト、文献リスト、既存のシステマティックレビューなどから検索し、また国際的な専門家グループから未発表論文を推薦してもらうなどして53,491の文献を当たって、その中から最終的に48(無作為化試験19、非無作為化試験29)を選定した。
レビューは、指導によってどれぐらいウォーキングをするようになったのか、職場や学校など集団群ごとの効果の違い、また身体活動度やフィットネス、疾患リスクや健康、福祉との関連性について評価した。
出無精な人の活動レベルを上げることはできるが……
レビューによって明らかになったのは、指導内容は、その人が出無精なのか動機付けがされているかなど個別背景に即してアレンジすること、個人に対しては簡単なアドバイス、万歩計の使用、テレコミュニケーションを介して指導ができること、また個別マーケティングで家族を対象とする指導も可能で、より多くの人にウォーキングをすすめることはできる。しかし、持続性や普遍性、あるいは臨床効果については、はっきりしないということだった。指導の効果が最もあったと認められたのは、1週間で平均30~60分しか歩かない出不精の人へ行った場合。
Ogilvie氏らはこれらの結果を受け、少なくとも極端に出無精な人の活動レベルを上げることはできるが、職場や学校、地域など集団単位で健康増進を行う手法について、現状では効果的と言える指導方法はなく、効果がありそうだとのエビデンスレベルにとどまるとまとめている。
(宮下 努:医療ライター)