保護施設に居住するホームレスの多くが健康問題を抱えており、精神疾患や薬物乱用障害の罹患率が高く、死亡については特に外的要因による場合が多いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学のSandra Feodor Nielsen氏らの検討で示された。先進国では、一般人口に比べホームレスの死亡率が上昇していることが数多くの研究で報告されており、その原因として精神疾患との関連が指摘されている。しかし、ホームレスは宿泊施設が十分でないためサンプリングやモニタリングが難しいという限界があるという。Lancet誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月14日号)掲載の報告。
保護施設のホームレスの精神疾患、死亡を評価する前向きコホート試験
研究グループは、デンマークの保護施設に居住するホームレスの精神疾患、死亡、死亡の予測因子を評価するプロスペクティブな全国登録ベースのコホート試験を行った。
対象は、1999年1月1日~2009年12月31日までにデンマーク・ホームレス・レジストリーに登録された16歳以上のホームレスであった。精神疾患罹患率、全体および原因別の標準化死亡比(SMR、予測死亡率に対する被験者集団における実際の死亡率の比)、さらに平均余命を算出し、死亡の予測因子の評価を行った。
精神疾患罹患率:男性62.4%、女性58.2%、外的要因による死亡率27.9%
3万2,711人(男性2万3,040人、女性9,671人)のホームレスが解析の対象となった。男性の62.4%(1万4,381人)、女性の58.2%(5,632人)が精神疾患に罹患しており、それぞれ49.0%(1万1,286人)、36.9%(3,564人)が薬物乱用と診断された。試験期間中に、男性の16.7%(3,839人)、女性の9.8%(951人)が死亡した。
全体のSMRは男性が5.6(95%信頼区間:5.4~5.8)、女性は6.7(同:6.2~7.1)で、原因が特定された死亡4,161件のうち1,161件(27.9%)が外的要因によるものであった。15~24歳の平均余命は、一般人口に比べホームレスの男性が21.6歳(同:21.2~22.1)、女性は17.4歳(同:16.4~18.5)短かった。
多変量解析では、精神疾患のない者に比べて、薬物乱用障害者の死亡リスクは男性が1.4倍(95%信頼区間:1.3~1.5)、女性は1.7倍(同:1.4~2.1)であり、最も高かった。
著者は、「保護施設に居住するホームレスの多くが健康問題を抱えている。高い罹患率と、特に外的要因に起因する高い死亡率を抑制するには、より多くの継続的な努力が急務とされる」とまとめ、「登録されたデータは、ホームレスの人々に関する既存の情報を補足する重要な医療資源である」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)