1990年代後半に全米で推進された質改善の動きによって起きたことの一つに、オピオイド鎮痛薬の処方増が挙げられている。しかしそれに関して、救急部門において疼痛治療のためのオピオイド処方が増えたのか、またオピオイド処方をめぐる人種・民族間の格差に関する状況は明らかにされていなかった。そこでカリフォルニア大学疫学・バイオ統計学部のMark J. Pletcher氏らが調査を実施。JAMA誌2008年1月2日号で報告した。
13年間のNHAMCSの記録を対象に
調査は、National Hospital Ambulatory Medical Care Survey(NHAMCS)の13年間(1993~2005年)の記録から、救急部門受診の理由が疼痛治療関連だったもの、および診断コードを参照抽出して行われた。検証されたのは、救急部門におけるオピオイド処方件数は増えたのか、白人患者は他の人種・民族集団よりオピオイドを処方されている傾向は見受けられるか、および2000年以降、人種・民族間の処方格差は縮小しているかについて。
白人患者の有意性は変わらず
検証された期間の、救急部門への疼痛治療関連の受診は42%(156,729/374,891)。
オピオイド処方は、1993年は23%だったが、2005年には37%に増えており(傾向のP<0.001)、2001~2005年の間の増大傾向が最も大きかった(P=0.02)。
白人患者へのオピオイド処方は31%で、黒人(23%)、ヒスパニック(24%)、アジア系・その他患者(28%)より多く受けている可能性が認められた(傾向のP<0.001)。また2005年における白人患者とそれ以外の患者のオピオイド処方率を比べると、40% vs 32%で、時とともに差異が縮小していることは認められなかった(P=0.44)。
人種・民族性による処方格差は、あらゆる疼痛治療の受診において明らかで、痛みの度合いが増すほど明瞭となり、骨折、腎石症、小児疾患においても格差は認められた。
また痛みの度合いおよびその他因子を補正しても格差は実質的に縮まらず、白人患者の有意性は否定できなかった。
Pletcher氏は、「我々の調査結果は、急性疼痛管理の質と機会均等について、実態を明らかにし改善するための新たな戦略が必要なことを示すものだ」と述べている。
(武藤まき:医療ライター)