特発性乳児高カルシウム血症発症の分子的基盤を調査していたドイツ・ミュンスター大学小児病院のKarl P. Schlingmann氏らは、遺伝的危険因子としてCYP24A1変異を見いだしたことを報告した。報告によればCYP24A1変異が起因となり、ビタミンDの感受性を亢進し、特発性乳児高カルシウム血症発症の特徴である重症高カルシウム血症を発症。このため同因子を有する乳児は一見健康でも、ビタミンDの予防的投与によって疾患を発症し得る可能性があるという。乳児へのビタミンD投与は最も古く最も有効な、くる病の予防法であり、北米では事実上くる病根絶に結びついた。しかし1950年代に、ビタミンD強化ミルク製品を飲んだ英国の乳児で特発性乳児高カルシウム血症の発症が増大し、以来、ビタミンDの毒性作用、推奨すべき至適投与量についての議論が続いている。NEJM誌2011年8月4日号(オンライン版2011年6月15日号)掲載報告より。
家族内発症例コホートで遺伝子変異を調査
Schlingmann氏らは、常染色体劣性遺伝が疑われる典型的な特発性乳児高カルシウム血症の家族内発症例コホート(4家族6症例、また第2コホートとしてビタミンDの毒性作用による発症が疑われた4家族4症例)で、候補遺伝子アプローチを用いて遺伝子の特定を行った。
具体的には、
CYP24A1がビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3分解の鍵となる酵素25-ヒドロキシビタミンD24-ヒドロキシラーゼ)をコードしている特性を利用し、その変異について調べた。
発症全例に明らかなCYP24A1劣性変異を特定
結果、遺伝子コードの配列解析の結果、患児6例に明らかな
CYP24A1の劣性変異が認められた。
CYP24A1変異は、ビタミンDの予防的ボーラス投与後に重症高カルシウム血症を呈したビタミンDの毒性作用による発症が疑われた乳児コホート(第2コホート)の4例でも同定された。
機能的特性解析の結果、すべての
CYP24A1変異において完全な機能喪失が認められた。
(武藤まき:医療ライター)