若い時に持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿が認められた人は、末期腎不全(ESRD)に至るリスクが有意に増大することが、イスラエルで行われたコホート研究から報告された。ただしその発生率および絶対リスクは非常に低いままではあった。報告は、同国シバメディカルセンターのAsaf Vivante氏らが約22年間の長期にわたるリスクを追跡したもので、JAMA誌2011年8月17日号で発表された。これまで、同リスクに関する長期アウトカムを検証したデータは有効なものがほとんどなかった。
イスラエル16~25歳120万人超を約22年追跡
調査は、イスラエル全国民ベース後ろ向きコホート研究として行われた。対象となったのは、1975~1997年に兵役検査を受けた16~25歳(男性60%)の120万3,626人で、その医療データとイスラエルESRDレジストリデータとをリンクして検証された。
検証データに含まれたのは、1980年1月1日から2010年5月31日までに治療を受けたESRDインシデント症例で、Cox比例ハザード・モデルを用いて、持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿と診断された被験者におけるESRD治療発生のハザード比(HR)が推定された。
主要評価項目は、ESRD治療開始日(初めての透析治療開始日または腎移植を受けた日)。追跡期間は21.88(SD 6.74)年だった。
ESRD発生リスク、血尿診断あり群がなし群の19.5倍
被験者120万3,626人のうち、持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿と診断されたのは3,690人(0.3%)だった。そのうち、ESRD治療となったのは26人で0.70%だった。これに対し、同診断なし群(119万9,936人)でESRD治療となったのは0.045%(539人)だった。発生率は10万人・年につき、診断あり群34.0、診断なし群2.05で、粗ハザード比は19.5(95%信頼区間:13.1~28.9)だった。
年齢、性、父親の出身国、登録年、BMI、基線血圧で補正した多変量モデルにおいても、同ハザード比は18.5(同:12.4~27.6)で、リスクの大きさは変わらなかった。
なおESRD治療リスクが特に大きかったのは、一次性糸球体疾患を原因とした場合で、発生率は10万人・年につき、診断あり群19.6、診断なし群0.55で、ハザード比は32.4(同:18.9~55.7)だった。無症候性顕微鏡的血尿が原因と考えられたESRD治療者の割合は、4.3%(95%信頼区間:2.9~6.4%)であった。
(武藤まき:医療ライター)