院外心停止で心調律解析前に行う救急医療サービス(EMS)隊員管理下での心肺蘇生法(CPR)は、短時間(30~60秒間)でも、長時間(180秒間)でも、その後のアウトカムに有意差は認められないことが報告された。カナダ・オタワ大学のIan G. Stiell氏らROC(Resuscitation Outcomes Consortium)研究グループによる。米国心臓協会国際連絡協議会(AHA-ILCOR)が蘇生ガイドライン2005で、それまでの即時除細動を行う戦略を改め、EMS隊員がまず心調律解析前に2分間、CPRを行うことを推奨する内容に改訂した。しかし、その後の試験で、試行を支持する知見と否定する知見が報告され、蘇生ガイドライン2010では、「エビデンスは相矛盾している」という内容に再修正されているという。NEJM誌2011年9月1日号掲載報告より。
CPR実施時間を30~60秒と180秒に無作為割り付け
Stiell氏らは、CPR施行時間は短い戦略がよいのか、比較的長めに行う戦略がよいのかについてクラスタ無作為化比較試験を行った。米国とカナダ合わせて10大学とその関連EMSシステムの施設が共同参加し、院外心停止を来した成人患者を、最初の心電図解析の前にEMS管理下で、30~60秒間CPRを受ける群と、同180秒間CPRを受ける群に割り付けた。
主要アウトカムは、良好な機能状態(改変ランキン・スケール・スコアが≦3、同スコアは0~6の範囲で値が高いほど障害が重い)での生存退院とした。
両群のアウトカムに有意差なし
対象とした9,933例の患者のうち、5,290例は心調律の早期解析群に、4,643例は遅めの解析群に割り付けられた。
結果、主要アウトカムの基準を満たしたのは、遅めの解析群計273例(5.9%)、早期解析群計310例(5.9%)で、クラスタ補正後の差は-0.2ポイントだった(95%信頼区間:-1.1~0.7、P=0.59)。
交絡因子補正後、両群とも生存に関するベネフィットが示されなかった(クラスタ補正後の差:-0.3ポイント、95%信頼区間:-1.3~0.7、P=0.61)。サブグループ解析(事前特定解析、事後解析)においても同様であった。
(朝田哲明:医療ライター)