第VIII因子インヒビターを有する重症血友病A患者に対し、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体(AICC、商品名:ファイバ)を予防的に投与することで、関節内出血およびその他の部位での出血頻度が有意に低下することが明らかになった。予防的投与の安全性も確認された。米国・チュレーン大学ルイジアナセンターのCindy Leissinger氏らによる前向き無作為化クロスオーバー試験「Pro-FEIBA」からの報告による。同患者は、重篤な出血性合併症リスク、末期関節症への進行リスクが高いことが知られる。AICCがそうした患者に対し出血を予防する可能性についてはこれまで散発的な報告はなされていたが、最適な投与方法については確立されていなかった。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。
34例を対象に予防的投与期間中とオンデマンド治療期間中の出血回数を比較
研究グループは、欧米16ヵ所の血友病治療センターで2003年11月~2008年9月に、2歳以上のインヒビター高値の血友病A患者で、出血に対しバイパス製剤による治療を始めていた(試験前6ヵ月間で6回以上出血エピソードがあった)患者34例を登録した。
被験者は無作為に、AICCの予防的静注[目標用量85U/kg体重(±15%)を週3回(連続しない日に投与)]を6ヵ月間行う治療と、オンデマンド治療[出血に対し目標用量85U/kg体重(±15%)のAICCを投与]を6ヵ月間行う治療をクロスオーバーで受け、それぞれの治療期間における出血回数を主要エンドポイントとして比較された。両治療の間には、3ヵ月間の休薬期間が設けられ、その間の出血についてはオンデマンド治療が行われた。
予防的投与は全出血エピソードを62%減少
試験を完了しper-protocol解析で有効性評価がされたのは、34例中26例であった。
結果、オンデマンド治療期間と比較して予防的投与期間は、全出血エピソードが62%減少(P<0.001)、関節血症は61%減少(P<0.001)、標的関節出血(6ヵ月間の治療期間中片方の関節血症が3回以上)は72%減少(P<0.001)した。
被験者の33例が1回以上試験薬を受けており、それら被験者について安全性の評価が行われた。結果、1例が試験薬に対するアレルギー反応を有した。
(武藤まき:医療ライター)