厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のPeter Gillgren氏らの検討で示された。悪性黒色腫は、近年、主に白人において罹患率および死亡率が増加傾向にあり、診断年齢は低下する傾向にある。標準的治療は切除術だが、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫を切除する際の病巣辺縁からの最適な切除マージンについては、議論が多く確立された知見はないという。Lancet誌2011年11月5日号(オンライン版2011年10月24日号)掲載の報告。
切除マージン2cmと4cmのOSを比較する無作為化試験
研究グループは、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの悪性黒色腫の切除マージンを2cmとした場合と4cmの場合の生存の差について検討する多施設共同無作為化試験を実施した。
対象は、腫瘍の厚さが2mm以上の臨床Stage IIA~Cの原発性悪性黒色腫患者で、切除マージンが2cmの群あるいは4cmの群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は全生存率(OS)とした。
5年OSは両群とも65%
1992年1月22日~2004年5月19日までに、スウェーデン、デンマーク、エストニア、ノルウェーの53病院が参加し、9つの専門施設に936例が登録された。切除マージン2cm群に465例が、4cm群には471例が割り付けられた。各群1例ずつが追跡不能となったが、解析には含めた。
追跡期間中央値6.7年における死亡数は、2cm群が181例、4cm群は177例であり、有意な差は認めなかった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.85~1.29、p=0.64)。5年OSは、2cm群が65%(95%信頼区間:60~69)、4cm群も65%(95%信頼区間:60~70)と、両群で同等であった(p=0.69)。
著者は、「厚さ2mm以上の悪性黒色腫の切除術では、切除マージンは2cmで十分かつ安全であることが示唆される」と結論し、「国際的なガイドラインの多くは厚さ2mm以上の腫瘍の切除マージンは2~3cmを推奨しているが、3cmの場合は2cmよりも創閉鎖が明らかに困難で、2cmであれば多くの場合は植皮なしで閉鎖が可能である。今後は、全無作為化試験のメタ解析を行うべき」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)