救急外来を受診後入院例で、外科的治療の適応となった患者の6割以上、内科的治療適応例の4割以上が、深部静脈血栓(DVT)のリスクを有しているが、それらのうち深部静脈塞栓(DVE)の予防措置を受けていたのは50.2%だった──とする国際的横断研究の結果がLancet誌2008年2月2日号に掲載された。研究の名称はENDORSE(Epidemiologic International Day for the Evaluation of Patients at Risk for Venous Thromboembolism in the Acute Hospital Care Setting)。King’s College Hospital(英国)のAlexander T Cohen氏らによる論文である。
32ヵ国7万例弱で検討
本研究には世界32ヵ国の358施設(50床以上)で救急外来を受診し入院した68,183例が登録された。内訳は、内科的治療を受けた40歳以上の37,356例と外科的治療の適応となった18歳以上の30,827例である。入院後、DVTリスクが調べられた。リスク評価には、米国胸部疾患学会(ACCP)が2004年刊行した「静脈血栓塞栓予防」ガイドラインを用いた。
予防が行われていたのは外科的治療例58.5%、内科的治療例39.5%
その結果、外科的治療例の64.4%、内科的治療例の41.5%にDVTリスクが認められた。東南アジアから唯一参加していたタイのリスクも世界平均と同様で、DVTリスクを認めた患者は、外科62%、内科49%だった。
次に、これらのDVTリスクを認める患者において、上記ACCPガイドラインが推奨する深部静脈塞栓(DVE)の予防が行われていた割合を見ると、外科的治療58.5%、内科的治療39.5%だった。
これらよりCohen氏らは、DVTリスクを持つ入院患者は多いにもかかわらず、適切な予防措置がとられていないと結論している。
なお、上記ACCPガイドラインでは手術後「DVT低リスク」群に対しては、「早期からの“積極的”歩行」を推奨するが特にDVE予防措置をとる必要はないとしているが、本研究では術後「低リスク群」の34%が何らかの「予防措置」を受けていた。
(宇津貴史:医学レポーター)