入院患者では医原病が重要な問題との認識が高まっているが、高リスク新生児治療室における医原病の疫学データはほとんどないという。Isabelle Ligi氏(地中海大学La Conception病院新生児科、マルセイユ、フランス)らが実施したプロスペクティブなコホート研究の結果、新生児では医原病の発生頻度が高く、重症例も多いことが明らかとなった。Lancet誌2008年2月2日号掲載の報告。
医原病と患者特性の関連を明確化する観察研究
研究グループは、2005年1月1日~9月1日にかけて、フランス南部地方の高リスク新生児センターに入院した全新生児を対象に、医原病の頻度、重症度、予防可能性、リスク因子を評価し、医原病と患者特性の関連を明確化するための観察研究を実施した。
医原病は、「害の有無にかかわらず患者の安全性の限界を超えたイベント」と定義。報告は、自発性に基づいて匿名で行い、懲罰措置は行わないものとした。1,000人日(patient days)当たりの発生率を主要評価項目とした。
頻度は25.6/1,000人日、29%が重症例
388人の新生児(1万436人日)が調査の対象となり、116人において267件の医原病が記録された。発生頻度は1,000人年当たり25.6であった。92件(34%)は予防可能な事例であり、78件(29%)が重症であった。2件(1%)が致死的であったが、いずれも予防は不可能な事例であった。
重症例の頻度が高い医原病は院内感染(49/62件、79%)および呼吸器系のイベント(9/26件、35%)であった。皮膚損傷(94件)の頻度が高かったが、全般に軽症例が多かった(89/94件、95%)。薬物誤用の頻度は4.9/100回であり、多くは投与段階で起きていた。
主要なリスク因子は、出生時低体重および短い在胎期間(それぞれp<0.0001)、長い入院日数(p<0.0001)、中心静脈ライン(p<0.0001)、機械的人工換気(p=0.0021)、持続的気道陽圧法(CRAP)によるサポート(p=0.0076)であった。
Ligi氏は、「新生児のなかでも特に出生時低体重児において医原病の頻度が高く、重症例も多い」と結論、「これら脆弱な集団に対する健康ケアの質を改善するには、医原病の頻度および特性に関する認識を改め、継続的なモニタリングを行うことが有用な可能性がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)