Jing Xie氏(ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科、イギリス)によれば、認知症は死亡リスクを増大させるが、イングランド/ウェールズ地方における認知症患者の生存期間は明らかにされていない。同氏らの研究グループは、認知症発症後の生存期間を推計し、さまざまな背景因子ごとに解析を行った。その結果、フォローアップ期間14年における認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年であり、性別、発症年齢、機能障害が生存期間に有意な影響を及ぼした。BMJ誌2008年2月2日号(オンライン版2008年1月10日号)掲載の報告。
65歳以上の1万3,004人の発症状況と生存期間を調査
Medical Research Council’s Cognitive Function and Ageing Study (MRC CFAS)は、認知症発症後の生存期間の評価を目的に、1991~2003年にイングランド/ウェールズで実施された地域集団をベースとしたプロスペクティブな多施設共同コホート研究。
農村部の2施設および都市部の3施設に65歳以上の1万3,004人登録された。登録後2年、6年、8年、10年に認知症の評価を行い、フォローアップ期間14年(2005年)の時点における生存期間を推計した。
死亡の有意な予測因子は「男性」「より高齢で発症」「重度の機能障害」
試験期間中に認知症を発症した438人(女性:311人、男性:127人)のうち、2005年12月までに356人(81%)が死亡した。認知症の発症年齢中央値は女性84歳、男性83歳であり(p=0.001)、死亡年齢中央値はそれぞれ90歳、87歳であった(p=0.001)。認知症発症後の推計生存期間中央値は女性が4.6年、男性が4.1年で、全体では4.5年であった。
発症年齢別の生存期間中央値は、65~69歳が10.7年、70~79歳が5.4年、80~89歳が4.3年、90歳以上が3.8年であり、65~69歳と90歳以上の間には約7年の差が認められた。多変量解析では、フォローアップ期間中に認知症がみられた患者における死亡の有意な予測因子として、男性(p=0.007)、発症年齢が高齢(p=0.03)、Blessed dementia scaleによる機能障害が重度(p=0.002)が確認された。
Xie氏は、「認知症発症後の推計生存期間中央値は4.5年、死亡の有意な予測因子は性別、発症年齢、機能障害であった」と結論し、「これらの知見は、患者、介護者、サービス提供者、政策立案者にとって予後予測や計画立案に有用と考えられる」と指定している。
(菅野守:医学ライター)