ARDSに対するサルブタモール治療により死亡率が増加

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/02

 



急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する早期のサルブタモール静脈内投与による治療は、プラセボに比べ28日死亡率が有意に高く、転帰を悪化させると考えられることが、英国・Warwick大学のFang Gao Smith氏らが行ったBALTI-2試験で示された。人工呼吸器装着患者の約14%にARDSがみられ、その死亡率は40~60%に達し、生存例もQOLが大きく損なわれることが報告されている。ARDSの治療では、短時間作用性β2アドレナリン受容体刺激薬であるサルブタモールの最大7日間の静脈内投与により、肺血管外水分量やプラトー気道内圧が低下することが、無作為化対照比較第II相試験で示されている。Lancet誌2012年1月21日号(オンライン版2011年12月12日号)掲載の報告。

サルブタモールの死亡率抑制効果を評価する無作為化試験




BALTI-2試験の研究グループは、ARDSに対するサルブタモールの最大7日間静脈内投与の死亡率の抑制効果を評価する多施設共同無作為化プラセボ対照試験を実施した。

2006年12月~2010年3月までに、イギリスの46の集中治療施設からARDS発症後72時間以内の16歳以上の人工呼吸器装着患者が登録され、サルブタモール(15μg/kg標準体重/時)あるいはプラセボを最大7日間投与する群に無作為に割り付けられた。

患者、介護士、担当医には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、無作為割り付けから28日以内の死亡とした。
中間解析で28日死亡率が有意に高く、試験中止に




326例が登録され、サルブタモール群に162例が、プラセボ群には164例割り付けられた。両群で1例ずつが同意を取り消したため、それぞれ161例、163例で評価が可能だった。

2回目の中間解析の結果、安全性に関する懸念により登録は中止された。28日死亡率は、サルブタモール群が34%(55/161例)と、プラセボ群の23%(38/163例)に比べ有意に高かった(リスク比:1.47、95%信頼区間:1.03~2.08)。

著者は、「ARDSに対する早期のサルブタモール静脈内投与による治療は忍容性が不良であった。効果が得られる可能性は低く、転帰を悪化させると考えられた」と結論し、「人工呼吸器装着ARDS患者に対するβ2作動薬によるルーチン治療は推奨されない」としている。

(菅野守:医学ライター)