てんかん重積状態の患者に対する病院到着前の処置について、ミダゾラム(商品名:ドルミカムほか)の筋肉内投与は、ロラゼパム(商品名:ワイパックスほか)の静脈内投与と、痙攣発作の停止に関する有効性と安全性は同等以上であることが報告された。米国・ミシガン大学救急医学部門のRobert Silbergleit氏らが、二重盲検無作為化非劣性試験を行った結果による。持続性の発作は、ベンゾジアゼピン系薬の静脈内投与で早期に停止することで転帰が改善するが、より速く確実に薬を投与するため、米国の救急救命士の間では筋注で処置する傾向が増えているという。NEJM誌2012年2月16日号より。
5分以上痙攣が持続する患者を筋注と静注に無作為化
研究グループは、病院到着前に救急救命士の処置を受けた、てんかん重積状態の小児と成人を対象に、ミダゾラム筋肉内投与とロラゼパム静脈内投与の有効性を比較する試験を行った。被験者は痙攣が5分以上続き、救急救命士が現場に到着後も痙攣が続いていて、筋肉内自動注入装置または点滴静注のいずれかで試験薬が投与された。
主要評価項目は、病院救急部門到着時点で発作が停止しており救急治療の必要性がなかったこととし、副次評価項目は、気管内挿管、再発作、痙攣発作停止と関連する治療のタイミングとした。
本研究におけるミダゾラム筋肉内投与のロラゼパム静脈内投与に対する非劣性のマージンは、10%ポイントと定義し検討が行われた。
ミダゾラム筋注はロラゼパム静注と同等以上の効果
病院救急部門到着時に発作が停止しており救急治療の必要がなかったのは、ミダゾラム筋肉内投与群は被験者448例中329例(73.4%)、ロラゼパム静脈内投与群は445例中282例(63.4%)だった(絶対差:10%ポイント、95%信頼区間:4.0~16.1、非劣性と優越性のいずれもP<0.001)。
気管内挿管の必要性(ミダゾラム筋肉内投与群14.1%、ロラゼパム静脈内投与群14.4%)と再発作(それぞれ11.4%、10.6%)に関しては、両群は同程度だった。
病院救急部門到着前に発作が停止した被験者における、試験薬投与までの時間の中央値は、ミダゾラム筋肉内投与群1.2分、ロラゼパム静脈内投与群4.8分であり、投与から痙攣発作停止までの時間の中央値は、それぞれ3.3分と1.6分だった。有害事象の発生率は両群で同程度だった。
(朝田哲明:医療ライター)