成人への肺炎球菌ワクチン接種に関して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)との費用対効果について比較した結果、PCV13接種に高い費用対効果があることが報告された。ただし報告では、前提条件次第で逆転もあり得ることも示されている。米国・ピッツバーグ医科大学のKenneth J. Smith氏らが、50歳成人の仮定コホート群を対象として行った解析の結果で、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。同種の検討はこれまで行われていなかった。
65歳でPCV13接種、2万8,900ドル/QALYとPPSV23接種より費用対効果が大きい
研究グループは、米国人50歳の仮定コホートを用いて、PCV13接種とPPSV23接種についての費用対効果についてシミュレーションを行った。
ワクチン戦略と推定される有効性については、デルフォイ専門家委員会によって呈された。乳幼児へのPCV13ワクチン接種による間接的な(集団免疫)効果は、PCV7で観察された効果に基づいて推定された。
モデル・パラメータのためのデータ・ソースには、疾病管理予防センター(CDC)Active Bacterial Coreサーベイランス、国立病院Discharge Survey、全国入院患者標本データと国民健康保険Interview Surveyが含まれていた。
主要アウトカムは、予防できた肺炎件数と、質で調整した生存年数(QALY)増加にかかる費用だった。
結果、現行推奨基準(例えば65歳時のワクチン接種、共存症がある場合はそれより低年齢でのワクチン接種)のPPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、全く接種しない場合との比較で、2万8,900ドルで、PPSV23接種戦略(同3万4,600ドル)よりも費用対効果に優れていた。
PCV13の非菌血性肺炎球菌肺炎への有効性など、前提を変えることで結果は逆転も
また、50歳と65歳でPCV13を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は、PPSV23接種に代わってPCV13を接種した場合との比較で、4万5,100ドルだった。さらに、50歳と65歳でPCV13を接種した上で、75歳でPPSV23を接種した場合のQALY獲得にかかる費用は49万6,000ドルだった。
Smith氏は、「費用対効果の絶対基準はないが、一般的にQALY獲得の介入コストが2万ドル未満なら採用エビデンスは強いとみなされ、2万~10万ドルなら中等度、10万ドル以上なら弱いとみなされている」と述べている。
一方こうした結果は、感受性解析でも強固であったが、前提となる、PCV13の非菌血性肺炎球菌性肺炎に対する有効性を下げたり、乳幼児へのワクチン接種による集団免疫効果を上げれば逆転した。その場合は、現行推奨されるPPSV23接種のほうが、費用対効果が高かった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)