急性虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法として、tenecteplase(遺伝子組み換え型変異体組織プラスミノーゲン活性因子)は、現在唯一の標準療法であるアルテプラーゼ(商品名:アクチバシン、グルトパ)よりも再灌流および臨床アウトカムが有意に優れることが無作為化試験の結果、報告された。本報告は、英国・ジョン・ハンター病院のMark Parsons氏らが、アルテプラーゼ標準療法と、2つの用量群でのtenecteplase療法とを比較検討したフェイズ2Bの無作為化オープンラベル単盲検試験の結果で、NEJM誌2012年3月22日号で発表された。
無作為化前に、被験者にCT灌流イメージングを実施
研究グループは、75例の虚血性脳卒中患者を、発症後6時間以内にアルテプラーゼ(0.9mg/kg体重)またはtenecteplase(0.1mg/kg体重または0.25mg/kg体重)を投与されるよう3群に無作為に割り付け(各25例ずつ)比較検討した。無作為化に際し、血栓溶解療法のメリットを最も受けやすい患者を選択するため、基線でのCT灌流イメージングで梗塞巣よりも20%以上大きな灌流病変があり、CT血管造影でこれに関連した血管閉塞が認められる患者を適格とした。
共通主要エンドポイントは、24時間後の灌流強調MRI検査画像で再灌流が確認された灌流障害病変部の割合と、NIHSS(the National Institutes of Health Stroke Scale、42ポイントスケールでスコアが高いほど神経学的欠損が重い)で評価した24時間後の臨床的改善の度合いとした。
高用量tenecteplase群が再灌流と臨床アウトカムに優れる
全患者の基線での平均(±SD)NIHSSスコアは14.4±2.6で、投与までに要した時間は2.9±0.8時間だった。
24時間後、tenecteplase投与群は2群とも、アルテプラーゼ群より再灌流(P=0.004)と臨床状態(P<0.001)の有意な改善が認められた。頭蓋内出血またはその他の重大な有害事象について、有意な群間差はみられなかった。
高用量(0.25mg/kg)tenecteplase投与群は、90日時点での重篤な障害がない(同群患者の72%、アルテプラーゼ群は40%、P=0.02)ことを含むすべての有効性アウトカムについて、tenecteplase低用量群およびアルテプラーゼ群より優れていた。
(朝田哲明:医療ライター)