血行再建戦略の有効性について、多枝冠動脈疾患65歳以上患者を対象に経皮的冠動脈介入(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の長期生存について比較した結果、CABGを受けた患者のほうがPCIを受けた患者よりも、長期生存に優れることが見いだされたと結論する報告が発表された。米国心臓病学会財団(ACCF)と米国胸部外科医学会(STS)による共同研究で、研究グループの筆頭著者としてChristiana Care Health SystemのWilliam S. Weintraubが報告を行った。NEJM誌2012年4月19日号(オンライン版2012年3月27日号)掲載より。
65歳以上のレジストリ多枝病変患者を4年間追跡
研究グループは、65歳以上の急性心筋梗塞がない2枝病変または3枝病変を有する冠動脈疾患患者についてPCIとCABGの効果を検討する非無作為化観察研究を行った。2004~2008年に収集された、ACCFの全米心血管データレジストリ(National Cardiovascular Data Registry)とSTSの成人心臓手術データベース(Adult Cardiac Surgery Database)を、メディケア・メディケイドの請求データとリンクさせて検討した。また、アウトカムについての比較は、治療選択バイアスを極力軽減するため、傾向スコアと逆確率加重補正を用いて行われた。
死亡率、術後1年は有意差ないが、4年後はCABGのほうが低くリスク比0.79
被験者は、CABG群8万6,244例、PCI群10万3,549例で、追跡期間中央値は2.67年だった。
結果、治療後1年の補正後死亡率について、両群間に有意差は認められなかった(CABG群6.24%、PCI群6.55%、リスク比:0.95、95%信頼区間:0.90~1.00)。
しかし治療後4年では、CABG群のほうがPCI群より死亡率が低い傾向が認められた(16.4%対20.8%、リスク比:0.79、95%信頼区間:0.76~0.82)。
複数のサブグループ解析や、いくつかの異なる解析方法を用いた場合でも類似の結果が示された。残存交絡については感度解析によって評価された。
これらを踏まえ研究グループは、「緊急処置を必要としない高齢の多枝冠動脈疾患患者においては、CABGを受けた患者のほうがPCIを受けた患者と比較して、長期生存に優れるることが見いだされた」と結論した。
(朝田哲明:医療ライター)