冠動脈バイパス術(CABG)の施行について、心拍動下(オフポンプ)CABGの人工心肺(オンポンプ)CABGに対する相対的な有益性とリスクを検討する国際多施設共同無作為化対照試験が行われた。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏ら研究グループによるもので、血液製剤や術中出血、合併症の減少など周術期の有益性は認められる一方、血行再建術の早期再施行リスクの上昇が認められたと報告している。NEJM誌2012年4月19日号掲載報告より。
30日時点の優位性を79施設で比較
研究グループは2006年11月~2011年10月の間に19ヵ国79施設から、CABGが予定されていた4,752例を登録して試験を行った。被験者は81%が男性、平均年齢は68歳だった。
被験者は、オフポンプCABG群(2,375例)またはオンポンプCABG群(2,377例)に無作為に割り付けられた。
第1の共通主要アウトカムは、無作為化30日後の死亡、非致死性の脳卒中、非致死性の心筋梗塞、または透析を必要とする腎不全の新規発症の複合とした。
血行再建術の早期再施行リスクは増加
結果、オフポンプCABGとオンポンプCABGの間に、主要複合アウトカムの発生率についての有意差はみられなかった(9.8%対10.3%、オフポンプ群のハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、P=0.59)。個々のアウトカムについても同様だった。
オフポンプCABGはオンポンプCABGと比較して、血液製剤の輸注量(50.7%対63.3%、相対リスク:0.80、95%信頼区間:0.75~0.85、P<0.001)、術中出血による再手術率(同1.4%対2.4%、0.61、0.40~0.93、P=0.02)、急性腎障害の発生率(同28.0%対32.1%、0.87、0.80~0.96、P=0.01)、呼吸器合併症の発生率(同5.9%対7.5%、0.79、0.63~0.98、P=0.03)はいずれも有意な低下が認められた。しかし、血行再建術の早期再施行率の上昇が認められた(同0.7%対0.2%、4.01、1.34~12.0、P=0.01)。
研究グループは「死亡、心筋梗塞、脳卒中、透析を必要とする腎不全の30日時点の発生率に関しては、オフポンプ群とオンポンプ群の間に有意差はなかった。またオフポンプCABGの血液製剤の輸注量、術中出血による再手術、呼吸器合併症、急性腎障害は減少したが、早期の血行再建術リスクが上昇した」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)