誘因が認められない非誘発性静脈血栓塞栓症を発症した患者に対し、アスピリン投与は、出血リスクを明らかに増大することなく再発リスクを有意に減らすことが報告された。イタリア・ペルージャ大学のCecilia Becattini氏らが行った無作為化試験の結果による。非誘発性静脈血栓塞栓症患者では、経口抗凝固療法中止後2年以内に再発する人が約20%を占め、抗凝固療法を延長することで再発は予防し得るものの、出血リスクが増大することが報告されていた。一方アスピリンの再発予防へのベネフィットについては、明らかになっていなかった。NEJM誌2012年5月24日号掲載報告より。
403例をアスピリン群100mg/日とプラセボに割り付け2年間投与追跡
Becattini氏らは、2004年5月~2010年8月の間に初発の特発性静脈血栓塞栓症を発症し6~18ヵ月の経口抗凝固療法を完了した403例を対象に多施設共同研修者主導二重盲検無作為化試験を行った。205例はアスピリン群(100mg/日)に、197例はプラセボ群に割り付けられ、2年間治療が行われた(1例はプラセボ群に無作為化後、治療開始前に死亡となった)。試験治療期間はオプションで延長可能とした。
主要有効性アウトカムは、静脈血栓塞栓症の再発とし、主要安全性アウトカムを大出血とした。
アスピリン群の再発は約半減と有意に減少
試験期間中央値24.6ヵ月の間に、アスピリン群205例のうち28例が、プラセボ群197例のうち43例で静脈血栓塞栓症の再発が認められた。年間発症率はアスピリン群6.6%、プラセボ群11.2%で、ハザード比は0.58(95%信頼区間:0.36~0.93、P=0.02)であった。
投与期間中央値23.9ヵ月の間の再発は、アスピリン群23例、プラセボ群39であった。年間発症率はそれぞれ5.9%、11.0%で、ハザード比は0.55(95%信頼区間:0.33~0.92、P=0.02)であった。
各群それぞれ1例の大出血事例があった。有害事象は両群で同程度であった。
(武藤まき・医療ライター)