低~中所得国の医療の人的資源に関する政策を評価するには、改善策の有効性を検討した質の高い総合的な研究が不足していることが、南アフリカ医療研究評議会(ケープタウン)医療システム研究科のMickey Chopra氏らの研究で明らかとなった。訓練された医療従事者の適切な供給と配置、そして医療サービスを提供する能力の管理は、特に低~中所得国において政策立案者が直面する喫緊の課題とされる。Lancet誌2008年2月23日号掲載の報告。
人的資源に関する政策の効果を評価した研究を収集
研究グループは、MedlineおよびEmbase(1979~2006年9月)、Cochrane Library、Human Resources for Health Global Resource Centerのデータベース、5つの関連専門誌10年分を検索し、専門家にも問い合わせてデータを収集した。解析対象には、医療従事者の訓練、配置、規制、経済、管理、組織、能力に影響を及ぼす政策を評価した英語の系統的レビューも含めた。
2名の研究者が別個に、レビューの適格性および質を評価し、政策の有効性に関するデータを系統的に抽出した。政策の効果の公正性、スケールアップの適合性、低~中所得国への適用性について評価を行った。
低~中所得国の試験は数編のみ
759編の系統的レビューのうち28編が適格規準を満たしたが、このうち低~中所得国の試験は数編のみで、質の低いものも含まれた。
医療の人的資源に影響を及ぼす国レベルの広範な政策に関するレビューはひとつもなかった。人的資源の組織メカニズム(個々の医療職間の代用や仕事の変更など)、役割の拡大、能力増強策(質の改善や生涯教育の戦略など)、チームワークの促進、ワークフローの変更については多くのエビデンスが認められた。
Chopra氏は、「低~中所得国の政策立案者が医療の人的資源の計画・管理を目的に導入した介入策を評価したり、政策立案者の参考となる研究成果を提供するには、これらの国における人的資源の改善策の有効性を検討した質の高い総合的な研究がもっと必要なことが明らかとなった」と結論している。
(菅野守:医学ライター)