未破裂脳動脈瘤の自然歴は動脈瘤の直径、部位、形状により異なることが、UCAS Japan(http://ucas-j.umin.ac.jp/index.html 事務局:東京大学医学部脳神経外科)研究から報告され、NEJM誌2012年6月28日号で発表された(筆頭著者はNTT東日本関東病院脳神経外科部長の森田明夫氏)。UCAS Japan研究は、本邦における未破裂脳動脈瘤のデータを広く収集し、これまで明らかとなっていなかった未破裂脳動脈瘤の自然歴および診療実態の調査を目的とする前向き研究で、日本全国脳神経外科学会認定施設を中心に、脳検診等で新たに脳動脈瘤が発見された治療例または未治療例すべての患者を登録・追跡している。
偶然に発見された未破裂脳動脈瘤の年間破裂率は0.95%
研究グループは2001年1月~2004年4月に、新規に未破裂脳動脈瘤が同定され登録された患者について調査した。適格とされた被験者は、20歳以上で最大径3mm以上の小嚢性動脈瘤を有し、初期には軽い身体障害のみを呈していた者で、登録後、動脈瘤の破裂、死亡に関する情報、定期的なフォローアップ検査の結果が記録された。
検討のためにデータを抽出した2010年4月時点で適格基準を満たしていたのは、283施設からの5,720例(平均年齢62.5歳、女性が68%)、動脈瘤6,697個だった。
検討された動脈瘤6,697個のうち、91%は偶然に発見されたものだった。また、大半は中大脳動脈(36%)と内頸動脈(34%)で認められ、平均径(±SD)は5.7±3.6mmだった。
動脈瘤1万1,660個・年の追跡期間中、破裂が確認された患者は111例で、年間破裂率は0.95%(95%信頼区間:0.79~1.15)だった。
「大きさ」「後・前交通動脈」「不正突出」で破裂リスクが高まる
破裂リスクは、動脈瘤の直径が大きくなるに従って増大した。各直径カテゴリー群のハザード比は、直径3~4mmを基準として、5~6mmでは1.13(95%信頼区間:0.58~2.22)、7~9mmでは3.35(同:1.87~6.00)、10~24mmでは9.09(同:5.25~15.74)、25mm以上では76.26(同:32.76~177.54)だった。
また中大脳動脈の動脈瘤と比較して、後交通動脈または前交通動脈の動脈瘤のほうが破裂の可能性が高かった[ハザード比:1.90(95%信頼区間:1.12~3.21)、2.02(同: 1.13~3.58)]。
また、不正な突出(blebまたはdaughter sac)のある動脈瘤も、より破裂の可能性が高かった(ハザード比:1.63、95%信頼区間:1.08~2.48)。
(武藤まき:医療ライター)