心臓移植待機リスト上位に位置する重度心不全の小児に対し、新たに開発設計された体外式補助人工心臓装置は、これまでの体外式心肺補助(ECMO)と比べて有意に高い生存率を示したことが、米国・テキサス小児病院のCharles D. Fraser, Jr.氏らによる前向き試験の結果、報告された。移植までのブリッジ使用可能な機械的循環補助オプションは小児では限られており、唯一の頼みの綱とされていたのがECMOだった。しかし、その使用は重大合併症が起きるまでの10~20日間に限られ、移植までに結びつくのは40~60%という。NEJM誌2012年8月9日号掲載の報告。
心臓移植待機中の16歳未満患児48例について前向き試験
検討された新たな補助人工心臓(VAD)は「Excor Pediatric Ventricular Assist Device」(Berlin Heart社)で、ECMOと比較する前向き単群試験が2007年5月~2010年12月に、16歳未満の心臓移植待機中の患児48例を登録して行われた。患児は体表面積に基づき2つのコホート(コホート1:0.7m
2未満、コホート2:0.7m2以上1.5m
2未満)に24例ずつ分けられ検討された。
2つのコホートの生存期間について(心臓移植実施時点または回復により機械から離脱した時点でデータを検閲)、それぞれにECMOを受けた傾向スコア適合ヒストリカル対照群(適合ECMO群1と2、2群とも48例)と比較した。
生存期間は有意に改善、ただし重篤な有害事象が多発
結果、コホート1(年齢中央値1歳、体重中央値9kg)は、174日時点でも生存期間中央値のデータ検閲に至っていなかったが、適合ECMO群1の生存期間中央値は13日と算出されていた(log-rank検定p<0.001)。
コホート2(同9歳、31kg)と適合ECMO群については、生存期間中央値は144日と10日だった(log-rank検定p<0.001)。
一方で、試験参加者の大半で重篤な有害事象が起き、コホート1とコホート2において重大出血はそれぞれ42%と50%、感染症は63%と50%、脳卒中は両群とも29%で発生した。
(朝田哲明:医療ライター)