中程度リスクの人に対する冠動脈性心疾患などの予測モデルについて、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウム値などを加えることで予測能が改善することが示された。米国・Wake Forest University School of MedicineのJoseph Yeboah氏らが、1,300人超を約8年追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。これまで、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウムや冠動脈性心疾患の家族歴などを追加した場合の冠動脈性心疾患の予測能改善については、単一コホートで直接比較した研究はなかったという。
フラミンガム・スコアに6つのリスクマーカーを加え、予測能を比較
研究グループは、試験開始時点で心血管疾患のない6,814人を対象に、心血管疾患の発症率などを調べる前向きコホート試験、「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)」の被験者で、フラミンガム・リスクスコアでリスクが中程度の1,330人について試験を行った。リスク中程度の同被験者には、糖尿病は認められなかった。
冠動脈カルシウム、頸動脈内膜中膜厚(CIMT)、足関節上腕血圧比、上腕血管拡張反応、高感度C反応性蛋白質(CRP)、冠動脈性心疾患(CHD)の家族歴の6つのリスクマーカーを加えることで、心血管リスクの予測能が改善するかどうかを調べた。
中央値7.6年間の追跡後、冠動脈性心疾患は94人、心血管イベントは123件発生した。多変量解析の結果、6つのリスクマーカーのうち、冠動脈カルシウム、足関節上腕血圧比、高感度CRP、CHD家族歴は、冠動脈性心疾患の独立リスク因子で、ハザード比はそれぞれ、2.60(95%信頼区間:1.94~3.50)、0.79(同:0.66~0.95)、1.28(同:1.00~1.64)、2.18(同:1.38~3.42)だった。
一方、CIMTと上腕血管拡張反応は、冠動脈性心疾患の独立リスク因子ではなかった。
CHDの純再分類改善度、冠動脈カルシウムは0.659
なかでも、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウムを加えることで、冠動脈性心疾患や心血管疾患発症に関するROC曲線下面積の増加幅は最も大きく、冠動脈性心疾患では、0.623から0.784に増加した。最も増加幅が少なかったのは、上腕血管拡張反応で、0.623から0.639への増加に留まった。
冠動脈性心疾患について、純再分類改善度は、冠動脈カルシウムが0.659、上腕血管拡張反応が0.024、足関節上腕血圧比が0.036、CIMTが0.102、CHD家族歴が0.160、高感度CRPが0.079だった。
心血管疾患についても、同様な結果が得られた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)