ダニ媒介の新種のフレボウイルス、米国で特定

提供元:ケアネット

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公開日:2012/09/12

 

 米国・ミズーリ州北部で発生した重症熱性疾患は、ダニを媒介として人へと感染した、新種のウイルスによるものであることが特定されたと、米国CDCのLaura K. McMullanらが報告した。このウイルスを「ハートランドウイルス(Heartland virus)」と命名したという。NEJM誌2012年8月30日号の短信報告より。

血清、PCR、培養で特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科のウイルスと確認
発生の報告は2009年初期で、男性2人が発熱、倦怠感、下痢、血小板減少症と白血球減少症で医療施設に搬送されたことだった。2人は見ず知らずの他人であったが、両者とも症状発症5~7日前にダニにかまれていた点が共通していた。当初は、病原体としてEhrlichia chaffeensisが疑われたが、血清、PCR、培養においても特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科に属するウイルスであることが確認された。

研究グループは、その後の次世代シーケンサーと系統発生学的分析から、このウイルスをフレボウイルス属の新種と特定した。

フレボウイルス属には抗原が異なる70種以上のウイルスがあるが、大きくスナバエ、蚊、ダニが媒介するタイプに分類される。このうちスナバエを媒介としたフレボウイルスは、アメリカ、アジア、アフリカ、地中海沿岸部で広く特定されていたが、ダニが媒介となりヒトへと感染し血小板減少症候群を伴う重度発熱(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)を発症したことが特定されたフレボウイルスは、2009年に中国中・北東部で特定された報告例が唯一だという。

「ハートランドウイルス」と命名
研究グループの今回の調査では、ダニから新規ウイルスは分離できず、患者に付着していたダニは入手できなかったなどいわゆる「コッホの原則」は不完全であったが、「患者の臨床症状からアメリカにおける新種のフレボウイルスであると信じるに足りる」と報告した。

そして、「ハートランドウイルス」と命名したたこの新種のウイルスに関して、人から人へ感染する可能性があるのかも含め、発生率、疾患重症度や詳しい臨床経過が明らかではないが、媒介の可能性が高い背中の1つ星模様が特徴のダニA. americanumがミズーリ州中南部に多く存在し、北大西洋に面するメイン州まで生息が確認されていることなどを踏まえて、現在認められるよりも発生が広がっている可能性を指摘。「この新種のウイルスの疾患負荷、感染のリスク、自然宿主を特定する疫学的および生態学的研究が必要だ」と報告をまとめている。

(武藤まき:医療ライター)