クラミジアの組織的スクリーニングは本当に費用効果に優れるか

提供元:ケアネット

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公開日:2007/08/24

 

イギリスでは2003年4月に、国の主導によるクラミジア(Chlamydia trachomatis)のスクリーニングプログラムが開始されたが、それ以前は組織的スクリーニングは行われていなかった。クラミジアの組織的スクリーニングは費用効果が優れるとする報告のほとんどが、感染症の評価には不適切な静的モデルを用いている。

 イギリス・バーミンガム大学健康サービス管理センター健康経済学のTracy Roberts氏らは、家庭をベースとした地域住民におけるクラミジアの積極的な組織的スクリーニングの費用効果を、非組織的スクリーニング(組織的な勧奨は行わず受診は対象者の意志に委ねられる)との比較において評価する試験(ClaSSプロジェクト、http://www.chlamydia.ac.uk/index.htm)を実施、BMJ誌7月26日付オンライン版、8月11日付本誌で報告した。

動的モデルを用いた費用効果の解析


イギリス中部~南西部に居住する16~24歳の男女、約5万人に対し、毎年、スクリーニングへの受診勧奨を実施した。受診者は家庭で採取したサンプルを検査に送り、陽性者への通告はGPの診察室で行われ、陰性者には書面が郵送された。

費用効果の評価には動的な数学モデルを用い、回避すべき主要測定項目としての骨盤内炎症性疾患(PID)、子宮外妊娠、不妊症、新生児合併症について解析を行った。

両スクリーニングのコストは同等、条件によっては組織的スクリーニングが高価


女性のみを対象としたスクリーニングプログラムは、非組織的スクリーニングよりも主要評価項目ごとの費用が高く、増分コストは2万2,300ポンド(=3万 3,000ユーロ、4万5,000ドル)であった。男性と女性を対象とした場合のコストも組織的スクリーニングが約2万8,900ポンド高かった。

回避すべき主要評価項目のうち最も頻度が高かったのは、入院を要するPIDであった。主要評価項目の発症率およびスクリーニングの受診率に対する sensitivityが高く、これら2つの要素が上昇すると女性のみのスクリーニングにおける主要評価項目ごとの費用効果は6,200ポンド低下した。

これらの知見を踏まえ、Roberts氏は「クラミジアの積極的な組織的スクリーニングは、主要評価項目の発症率およびスクリーニングの受診率が一般的な推定値よりも低い場合には費用効果に優れるとは言えず、むしろ高価である」と総括している。

また、「ClaSSプロジェクトから得られるエビデンスは、至適なスクリーニングの検出率および受診率の達成には組織的および非組織的スクリーニングの要素を合わせた混合モデルが有用な可能性がある、というものだ」と考察を加えている。

(菅野 守:医学ライター)