血行再建術を行わない急性冠症候群に対する経口抗血小板薬プラスグレル(国内未承認)投与について、クロピドグレル(商品名:プラビックス)投与を比較した結果、主要エンドポイントの心血管死または心筋梗塞、脳卒中の発生の有意な低下は認められず、一方で重度出血や頭蓋内出血リスクも同程度であったことが報告された。米国・デューク大学医療センターのMatthew T. Roe氏らによる二重盲検無作為化試験「Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes」(TRILOGY ACS)試験の結果、明らかにされた。NEJM誌2012年10月4日号(オンライン版2012年8月25日号)掲載報告より。
52ヵ国、9,000例超について二重盲検無作為化試験
研究グループは2008~2011年にかけて、52ヵ国、966ヵ所の医療機関を通じて、非ST上昇型の不安定狭心症または心筋梗塞で血行再建術を行わなかったアスピリン服用中の患者について、二重盲検無作為化試験を開始した。
登録被験者のうち75歳未満の患者7,243例を無作為に2群に分け、一方にはプラスグレル(10mg/日)を、もう一方にはクロピドグレル(75mg/日)を投与し、6~30ヵ月追跡した。また、75歳以上2,083例を無作為に2群に分け、一方にはプラスグレル(5mg/日)を、もう一方にはクロピドグレル(75mg/日)を投与し、同期間追跡した。
被験者の年齢中央値は66歳、女性が39%、非ST上昇型心筋梗塞が約7割、不安定狭心症が約3割を占めた。
75歳未満の虚血性イベントの再発、プラスグレル群で15%減
追跡期間の中央値は、17ヵ月だった。主要エンドポイントとした心血管死、または心筋梗塞、脳卒中を発症したのは、75歳未満群では、プラスグレル群13.9%、クロピドグレル群16.0%だった。プラスグレル群のクロピドグレル群に対するハザード比は、0.91(95%信頼区間:0.79~1.05、p=0.21)であり、両群の有意差はみられなかった。
同様の結果は、被験者全体においても得られた。
一方、75歳未満群では、虚血性イベントの再発リスクについて、プラスグレル群がクロピドグレル群より有意に低率だった(ハザード比:0.85、同:0.72~1.00、p=0.04)。
重度出血や頭蓋内出血率は、両群で同程度だった。心不全発症率がクロピドグレル群で高率だったことを除き、非出血性の重篤な有害イベントの発生は両群で同程度だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)