心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2012/10/22

 

 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らはメタ解析の結果、断定的なことは言えないとしながらも、観察データを含めれば安全性に関して懸念が残ることが示唆されたと述べ、トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢であると結論づけた。アプロチニンは安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていたが、最近、ヨーロッパとカナダで再上市されたという。BMJ誌2012年9月11日号より。

無作為化試験、観察試験をメタ解析
研究グループは、アプロチニン投与群と非投与群との死亡、心筋梗塞、脳卒中、腎不全あるいは腎機能障害の相対的リスクを推定するシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。コクラン・レビューをシステマティックレビューの起点とし、Medline、Embase、Cochraneの試験登録から文献検索した。

解析は、心臓手術を受けた患者に行われた2つ以上の介入(アプロチニン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、投薬なし)について治療傾向が一致または調整が行われた観察研究を対象とした。ネットワーク・メタ解析にて治療を比較し、オッズ比とその95%確信区間(credible intervals)を算出した。メタ解析は無作為化試験単独か、観察研究と合わせた無作為化試験に限定した。

アプロチニンの安全性に懸念残る結果
無作為化試験106件と観察研究11件(4万3,270例)が解析の対象となった。

無作為化試験の解析の結果、トラネキサム酸はアプロチニンと比較して、概して死亡リスクの減少と関連した(オッズ比:0.64、95%確信区間:0.41~0.99)。

観察データを組み込んだ場合も、アプロチニンの死亡率は、トラネキサム酸(対アプロニチンとの比較によるオッズ比:0.71、95%確信区間:0.50~0.98)、イプシロンアミノカプロン酸(同0.60、0.43~0.87)より平均的に増大を示した。また、腎不全あるいは腎機能障害リスクは、すべての比較群と比べて平均的に増大した。非投与群のオッズ比は0.66(95%確信区間:0.45~0.88)、トラネキサム酸群は同0.66(0.48~0.91)、イプシロンアミノカプロン酸は同0.65(0.45~0.88)だった。

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コメンテーター : 大野 貴之( おおの たかゆき ) 氏

三井記念病院 心臓血管外科 部長

J-CLEAR評議員