2型糖尿病の高リスク者を対象とした検診でみつかった患者に対し治療を行っても、約10年間の全死因死亡、心血管死、糖尿病関連死のリスクは検診を受けなかった者と変わらないことが、英国ケンブリッジ大学のRebecca K Simmons氏らが行ったADDITION-Cambridge試験で示された。2型糖尿病の有病率の増加は保健医療上の重要課題とされる。2型糖尿病の疾病負担の増大は、地域住民を対象とした検診や早期治療によって抑制される可能性があるが、検診のベネフィットは不明なままだという。Lancet誌2012年11月17日号(オンライン版2012年10月4日号)掲載の報告。
2型糖尿病検診と死亡の関連をクラスター無作為化試験で評価
ADDITION-Cambridge試験は、2型糖尿病の段階的な検診プログラムと死亡の関連の評価を目的とする実地臨床に即したクラスター無作為化試験。
イングランド東部地域の33のプライマリ・ケア施設が参加した。これらの施設が、検診で2型糖尿病と診断された患者に対し多元的な強化療法を行う群(15施設)、英国の糖尿病診療ガイドラインに準拠したルーチン治療を行う群(13施設)、検診を行わない対照群(5施設)に無作為に割り付けられた。
対象は、事前の評価で2型糖尿病の発症リスクが高いと判定された40~69歳の2万184人(平均年齢58歳)。検診として、血糖値検査で患者候補を選出し、標準的な経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で確定した。
全例が、イングランド-ウェールズの国家統計局による死亡調査の対象として登録された。主要評価項目は全死因死亡率とした。
最多の死因はがん
2001~2006年の間に、1万6,047人の2型糖尿病高リスク者のうち1万5,089人(94%)が検診を勧められ、受診した1万1,737人(73%)のうち466人(3%)が糖尿病と診断された。対照群は4,137人だった。
フォローアップ期間中央値9.6年(18万4,057人・年)の時点で、検診群の1,532人、対照群の377人が死亡した。全死因死亡率のハザード比(HR)は1.06〔95%信頼区間(CI):0.90~1.25、p=0.46〕であり、検診による有意な死亡率の低下は認めなかった。
心血管死のHRは1.02(95%CI:0.75~1.38)、がん死のHRは1.08(同:0.90~1.30)、糖尿病関連死のHRは1.26(同:0.75~2.10)であり、いずれも有意差はみられなかった。最も多い死因はがんだった。
著者は、「英国人の2型糖尿病高リスク者を対象とした検診は、約10年間の全死因死亡、心血管死、糖尿病関連死を低下させなかった」と結論し、「検診のベネフィットは予想よりも小さかった。検診を行う場合は、同時に糖尿病や心血管疾患のリスク因子の評価や管理を行い、これらの疾患の根本的な決定因子をターゲットとした地域住民レベルの予防戦略を実施する必要がある」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)