人口の高齢化にもかかわらず、高齢者の性行動と性機能についてはあまり知られていない。シカゴ大学プリッツカー医科大学院で医療倫理学を扱うStacy Tessler Lindau氏らは、米国内で57~85歳の3,005人(女性1,550人と男性1,455人)をランダムに抽出。性行動、活動性、問題点の出現率について報告するとともに、これらの変数が年齢や健康状態とどのように関連するのかについて報告した。NEJM誌8月23日号より。
高齢者の性問題、女性は性欲低下、男性は勃起不全
抽出したサンプルの非加重平均応答率は74.8%で、加重平均応答率は75.5%だった。回答者の性行動に関する応答率は年齢と共に減少した(57~64歳で73%、65~74歳で53%、75~85歳で26%)。女性は全年齢の男性より性行動に関する回答が有意に少なかった。
性的にアクティブな回答者では、男女とも半数は少なくとも1つの性に関する面倒な問題があると回答した。
女性にとって最もポピュラーな性の問題は、性欲低下(43%)、膣潤滑不全(39%)、不感症(34%)。男性では勃起不全(37%)であった。そして男性の14%は、性機能を高めるために薬物療法または補助食品を使用すると答えた。
男女とも、自分が健康でないと考えている人ほど性的にアクティブではなく、性的にアクティブだと答えた回答者ほど性の問題に積極的に回答を寄せていた。
性について問題を抱えてはいるが医師に相談する高齢者は少ない
高齢者は全般に性的にアクティブではあることはわかったが、女性は男性より夫婦生活やそれに類した関係を持つこと、そして性的にアクティブになることについて積極的でないことも明らかになった。また男性の38%、女性の22%が50歳頃から、性行動について医師に相談していると回答。高齢者において性の問題はしばしば起こるが、そうした問題について医師と話し合われる機会は少ないことも判明した。
Lindau氏らは報告の中で、「医師には、高齢者の一般的な健康問題や臨床上で治療可能な性の問題を見つける能力とともに、性に関する指導やカウンセリングができる能力も磨いてほしい」と述べている。
(朝田哲明:医療ライター)