治療選択肢で異なるQOLが治療転帰の満足度に影響:前立腺癌
前立腺癌患者の初回治療の転帰に対する満足度は、治療後の健康関連QOLの変化にかかっており、患者だけでなく配偶者やパートナーの治療転帰への満足度にも影響することを、アメリカ・ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの Martin G. Sanda氏らがNEJM誌2008年3月20日号に報告した。
術前術後に患者1,201例と配偶者ら625例を調査
対象は複数の医療機関から集められた患者1,201例(前立腺癌に対する根治治療:前立腺切除術、密封小線源療法、外部放射線療法いずれかを受療)と、配偶者・パートナー625例。
治療を受ける前と後に報告された転帰を前向きに測定することで、QOL変化に関係する要因を評価し、その要因が治療転帰に対する満足度にどうかかわっているかが判定された。
神経温存術で性機能への副作用を緩和
密封小線源療法もしくは放射線療法を受けた患者にとって、術後補助ホルモン療法は、複数のQOL領域で、より不良な転帰を伴った。
密封小線源療法を受けた患者からは、持続的な排尿刺激と腸機能、性機能症状に加えて、活力やホルモン機能に一時的な障害があると報告。
前立腺切除術による性機能への副作用は、神経温存術によって緩和されたこと、前立腺切除術の後で尿失禁が認められたが、前立腺が特に大きい患者では頻尿と尿閉が改善したことも報告されている。
処置の関連死は発生しておらず、深刻な有害事象はまれだったが、処置関連の症状が、肥満、前立腺肥大、前立腺特異抗原(PSA)スコア上昇、高齢なほど増悪していた。
満足度に関して、黒人患者では全体的な治療転帰の度合に比して低く、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度は、QOL変化と有意な関係がみられた。
Sanda氏らは、「それぞれの前立腺癌治療は、尿機能や腸機能、性機能、ホルモン機能に関係するQOL領域で異なる変化パターンを伴い、その変化は、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度に影響を及ぼしている」とまとめた。
(武藤まき:医療ライター)
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