新規のコレステロール低下薬であるAMG 145は、高コレステロール血症患者のLDLコレステロール(LDL-C)値を用量依存性に低下させることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のRobert P Giugliano氏らが実施したLAPLACE-TIMI 57試験で示された。心血管疾患の1次および2次予防のいずれにおいても、LDL-Cはリスク因子として確立されている。前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、LDL受容体に結合してその分解を促進し、LDL-C値を上昇させる。AMG 145はPCSK9に対し高親和性に結合するヒトモノクローナル抗体で、第I相試験ではプラセボに比し1回投与後1週間で最大64%、週1回反復投与で最大81%のLDL-C値低下効果が示されている。Lancet誌2012年12月8日号(オンライン版2012年11月6日号)掲載の報告。
スタチン服用患者における有用性をプラセボ対照無作為化第II相試験で評価
LAPLACE-TIMI 57試験は、スタチン服用中の高コレステロール血症患者に対するAMG 145の有用性を評価するプラセボ対照無作為化第II相用量決定試験。
対象は、年齢18~80歳、LDL-C値>2.2mmol/L(≒85.1mg/dL)でスタチンを継続的に服用している患者とした(エゼチミブ服用中の患者も含む)。これらの患者が、AMG 145 を2週ごとに70mg、105mg、140mgまたはプラセボを皮下注射する群、および4週ごとに280mg、350mg、420mgまたはプラセボを皮下注射する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、ベースラインから治療12週までのLDL-C値の変化率とした。
鼻咽頭炎、咳嗽、悪心の頻度が高かったが、Grade 3以上は認めず
2011年7月18日~12月22日までに、5ヵ国(米国、カナダ、デンマーク、ハンガリー、チェコ)78施設から631例(年齢中央値62.0歳、女性51%、BMI中央値29.0kg/m2、エゼチミブ服用率9%)が登録され、AMG 145を2週ごとに70mg投与する群に79例、105mg投与群に79例、140mg投与群に78例、プラセボ群には78例が、4週ごとに280mg投与する群に79例、350mg投与群に79例、420mg投与群に80例、プラセボ群には79例が割り付けられた。
治療12週の時点で、2週投与法、4週投与法ともにLDL-C値が用量依存性に有意に低下した。すなわち、2週投与法では70mg投与群で41.8%[95%信頼区間(CI):-47.2~-36.5、p<0.0001]、105mg投与群で60.2%(同:-65.6~-54.9、p<0.0001)、140mg投与群で66.1%(同:-71.5 ~-60.7、p<0.0001)低下した。また、4週投与法では280mg投与群で41.8%(同:-47.6~-36.1、p<0.0001)、350mg投与群で50.0%(同:-55.7~-44.3、p<0.0001)、420mg投与群で50.3%(同:-56.0~-44.6、p<0.0001)低下した。
有害事象の発現頻度はAMG 145群が58%(277/474例)、プラセボ群は46%(71/155例)で、AMG 145群で頻度が高かったのは鼻咽頭炎(10%、プラセボ群は7%)、咳嗽(3%、同:2%)、悪心(3%、同:0.6%)であったが、両群間に有意な差はなかった。治療関連有害事象の頻度はAMG 145群が8%(39/474例)、プラセボ群は7%(11/155例)で、重篤なもの(Grade 3)や生命を脅かすもの(Grade 4)は両群ともに認めなかった。
著者は、「PCSK9の阻害は脂質管理の新たなモデルとなる可能性がある」と結論づけ、「今回の結果は、心血管疾患リスクの高い患者における長期的な臨床効果と安全性を評価する第III相試験の実施を正当化するもの」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)