関節リウマチ治療における新たな生物学的製剤として、日本で開発されたヒト化抗インターロイキン(IL)-6受容体モノクローナル抗体トシリズマブ(商品名:アクテムラ)の有用性を示唆する第III相試験(OPTION study)の結果が、オーストリアVienna医科大学リウマチ科のJosef S Smolen氏によりLancet誌2008年3月22日号で報告された。IL-6は免疫および炎症反応に広範な作用を及ぼすが、この系を介して関節リウマチの発症にも関与すると考えられている。トシリズマブは、すでに日本およびヨーロッパの第II相試験で関節リウマチに対する有効性が示されていた。
メトトレキサートとの併用で、2種類の用量とプラセボを比較
トシリズマブはIL-6受容体を阻害することでIL-6を遮断する。Smolen氏らは、関節リウマチに対するトシリズマブの有用性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照パラレルグループ第III相試験を実施した。
2005年2月~2006年11月の間に17か国の73施設から中等度~重度の関節リウマチ623例が登録された。これらの症例が、メトトレキサート(10~25mg/週)との併用においてトシリズマブ 8mg/kg(205例)、同4mg/kg(214例)、プラセボ(204例)を4週ごとに静注投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24週で、16週の時点で腫脹関節数(SJC)および圧痛関節数(TJC)の双方の改善が20%に満たない場合は、トシリズマブ 8mg/kgを用いたレスキュー治療が行われた。
主要評価項目は、24週の時点で米国リウマチ学会(ACR)の判定規準による関節リウマチの徴候および症状が20%以上改善した症例の割合(ACR 20%改善率)とした。
ACR 20%改善率:8mg/kg群59%、4mg/kg群48%、プラセボ群26%
622例がintention-to-treat解析の対象となった。ACR 20%改善率は、8mg/kg群が59%(120/205例)、4mg/kg群が48%(102/214例)、プラセボ群が26%(54/204例)であり、プラセボ群に対する8mg/kg群のオッズ比は4.0(p<0.0001)、4mg/kg群のオッズ比は2.6(p<0.0001)と有意な改善効果が認められた。
ほぼ寛解とされるACR 70%改善率は、プラセボ群の2%に対し、8mg/kg群が22%、4mg/kg群が12%であった[プラセボ群に対するオッズ比はそれぞれ14.2(p<0.0001)、7.0(p<0.0001)]。
少なくとも1つ以上の有害事象を発現した症例の割合は、プラセボ群の63%(129/204例)に対し、8mg/kg群が69%(143/205例)、4mg/kg群が71%(151/214例)と治療群で多い傾向が見られた。最も高頻度に見られた重篤な有害事象は、重症感染症あるいはインフェステーション(外寄生)であり、8mg/kg群で6例、4mg/kg群で3例、プラセボ群で2例が報告された。
Smolen氏は、「トシリズマブは中等度~重度の活動性関節リウマチに対し有効な治療アプローチと考えられる」と結論し、「治療開始後2~4週には明らかな改善効果が認められ、効果は治療期間を通じて維持され、治療終了後も持続した。2種類の用量の比較は本試験の目的ではないが、8mg/kgのほうが強固な治療効果を示した」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)