関節リウマチ、3つのnon-TNF型生物学的製剤を比較/BMJ

関節リウマチの成人患者の日常診療では、リツキシマブ(Bリンパ球枯渇薬)およびトシリズマブ(IL-6受容体阻害薬)が、アバタセプト(T細胞共刺激標的薬)に比べ2年アウトカムが良好であることが、フランス・ストラスブール大学病院のJacques-Eric Gottenberg氏らが実施した前向きコホート研究で示された。これら3つの非腫瘍壊死因子(non-TNF)型生物学的製剤はいずれも関節リウマチに、プラセボに比べ優れた効能を有すると報告されているが、これらを比較した無作為化対照比較試験はなく、今後も直接比較試験が行われる可能性はほとんどないという。BMJ誌2019年1月24日号掲載の報告。
3つのレジストリの関節リウマチ患者データを前向きに解析
本研究は、関節リウマチの治療における3つのnon-TNF型生物学的製剤の効果と安全性を比較する目的で、フランス・リウマチ学会と3つのレジストリに参加した研究者の協働で行われた(Bristol-Myers Squibb、Roche、Chugaiの助成による)。解析には、2005年9月~2013年8月の期間に、フランスの53の大学および54の大学以外の臨床センターが参加するフランス・リウマチ学会の3つの患者レジストリ(AIR、ORA、REGATE)の1つに登録された関節リウマチ患者のデータを用いた。
対象は、年齢>18歳、米国リウマチ学会の診断基準(1987年版)を満たし、重度の心血管疾患や活動性/重度の感染症、重度の免疫不全がなく、24ヵ月以上のフォローアップが行われた患者であった。
主要アウトカムは、治療成功を維持した24ヵ月時の薬剤治療継続とした。治療不成功の定義は、(1)全死因死亡、(2)試験薬の投与中止、(3)新たな生物学的製剤または従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の併用治療の開始、(4)コルチコステロイドの用量が、ベースラインと比較して、連続する2回の受診時に>10mg/日の増量となった場合であった。
治療効果の群間差を定量化するために、治療成功維持生存期間差(life expectancy difference without failure:LEDwf、制限付き平均生存時間[restricted mean survival time:RMST])の差)および治療成功維持生存期間比(life expectancy ratio without failure:LERwf、RMSTの比)を算出した。
3つの生物学的製剤の安全性プロファイルには差がない
ベースラインの3つの生物学的製剤群の背景因子は、非重み付けコホート(3,162例)では罹患期間、がんの病歴、リウマチ因子陽性、疾患活動性、従来型DMARD併用、コルチコステロイド投与に差がみられたが、重み付けコホート(3,132例)ではバランスがとれていた。重み付けコホートでは、24ヵ月時の治療成功維持生存率は、リツキシマブ群が68.6%、アバタセプト群が39.3%、トシリズマブ群は63.4%であった。また、治療成功維持生存期間は、それぞれ19.8、15.6、19.1ヵ月だった。
LEDwfは、リツキシマブ群がアバタセプト群に比べ4.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.1~5.2)長く、トシリズマブ群はアバタセプト群よりも3.5ヵ月(2.1~5.0)長かった。また、LERwfはそれぞれ1.26(1.18~1.35)および1.22(1.12~1.33)であった。
リツキシマブ群とトシリズマブ群の比較に関する不確かさ(uncertainty)は実質的なものであった(LEDwf:-0.7、95%CI:-1.9~0.5、LERwf:0.97、0.91~1.03)。
重み付けコホートでは、24ヵ月時の1つ以上の重篤な有害事象(感染症、主要有害心血管イベント[MACE]、がん、死亡)の発現率は、リツキシマブ群が14.5%、アバタセプト群が16.2%、トシリズマブ群は11.6%であった。また、重篤な有害事象を伴わない生存率は、それぞれ85.0%、83.4%、86.7%で、重篤な有害事象なしの平均生存期間は22.1、21.8、22.3ヵ月であり、3組の2群間の比較ではいずれも有意な差を認めなかった。
著者は、「リツキシマブおよびトシリズマブの高い薬剤治療継続率は、良好な安全性プロファイルよりも、むしろ高い有効性に関連すると考えられる」とし、「これらの結果は、罹患期間が長く1剤以上の生物学的製剤の投与を受けている難治性の患者に適応され、生物学的製剤未投与で罹患期間が短い患者には適応されない」と指摘している。
〔2月13日 記事の一部を修正いたしました〕
(医学ライター 菅野 守)
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