結腸・直腸癌の肝転移に対し、手術と術前・後の化学療法を併用すると適格例および切除例の無増悪生存率(PFS)が改善することが、Bernard Nordlinger 氏らEORTC Intergroupの検討で明らかとなった。毎年、世界で約100万人が結腸・直腸癌と診断され、その40~50%に肝転移がみつかる。転移巣が切除可能な場合は5年生存率は35%に達するが、切除しても75%が再発するという。そのため、再発リスクを低減させるアプローチの探索が進められている。Lancet誌2008年3月22日号掲載の報告。
術前FOLFOX4+手術+術後FOLFOX4群と手術単独群を比較
研究グループは、結腸・直腸癌の切除可能肝転移例(転移巣数≦4)を対象に、手術+術前・後化学療法と手術単独を比較する無作為化対照比較試験を実施した。今回の報告は、プロトコールに規定されていない時点での中間解析によるPFSの最終データについてであり、全生存率は含まれない。
2000年10月~2004年7月の間に11か国の78施設から364例が登録され、FOLFOX4(フルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン)を6コース施行後に手術を行い、さらにFOLFOX4を6コース実施する群(182例)と手術単独群(182例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目はPFSのハザード比≦0.71とした。intention-to-treat解析のほか、適格例(併用群:171例、単独群:171例)および切除例(併用群:151例、単独群:152例)に限定した解析も行った。
ITT解析ではPFSに有意差なし、適格例、切除例で有意に改善
術前FOLFOX4施行(中央値6コース)後は151例(83%)が切除可能であり、115例(63%)が術後FOLFOX4(中央値6コース)を受療した。手術単独群では152例(84%)が切除可能であった。
3年PFSは、単独群の28.1%に対し併用群は35.4%と7.3%増加したが、ハザード比は0.79であり有意差を認めなかった(p=0.058)。一方、適格例の3年PFSは、単独群28.1%、併用群36.2%と8.1%増加(ハザード比:0.77、p=0.041)し、切除例ではそれぞれ33.2%、42.4%と9.2%増加(ハザード比:0.73、p=0.025)しており、いずれも有意な差が見られた。
解析時までに単独群で75例が、併用群では64例が死亡した。回復可能な術後合併症の頻度は、単独群(16%、27/170例)よりも併用群(25%、40/159例)で高かった(p=0.04)。手術関連の死亡例は単独群2例、併用群1例であった。
Nordlinger 氏は、「FOLFOX4による化学療法と肝転移巣切除術は併用可能であり、適格例および切除例では再発のリスクを低減する」と結論している。
なお、同じ号の本論文に対するコメントで、米国MDアンダーソン癌センターのScott Kopetz 氏とJean-Nicolas Vauthey氏は、ITT解析では有意差がないこと、適格例と切除例の解析は事前にプロトコールに規定のない後付け解析である点に着目し、「本試験では、術前・後の化学療法の併用によるPFSに対するポジティブな効果は証明されていない」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)