急性虫垂炎の診断は難しく、さまざまな臨床的特徴(痛点の移動や反跳圧痛など)が評価に用いられている。なかには、痛みについて、「車道に埋め込まれた減速バンプの上を通過する際に感じた痛み」について質問する医師もいるが、この質問に関する科学的根拠は見つかっていない。英国・オックスフォード大学のHelen F Ashdown氏らは、減速バンプを通過する際に感じる痛みが、急性虫垂炎の診断精度向上に本当に役立つのかについて検証した。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載「クリスマス特集」より。
減速バンプ通過時の痛みの有無と虫垂炎の診断の関連
研究グループは、地域総合病院の2次医療外科診断ユニットで、当番外科医チームに虫垂炎の可能性について照会があった17~76歳の101例の患者を対象に、質問票を基にした前向き診断精度研究を行った。
主要評価項目は、標準サンプルとした虫垂炎の組織学的診断とともに、虫垂炎診断での減速バンプ通過時に感じた痛みに関する感度、特異度、陽性・陰性適中率、および陽性・陰性尤度比とした。
減速バンプ通過時の痛みは有効な診断指標
解析は、病院に向かう途上で減速バンプを通過した64例を対象に行われた。
そのうち34例は虫垂炎の組織学的確定診断を受け、うち33例は減速バンプ通過時に痛みが増したと報告した。感度は97%(95%信頼区間:85~100%)、特異度は30%(同:15~49%)であり、陽性適中率は61%(同:47~74%)、陰性適中率は90%(同:56~100%)だった。陽性尤度比は1.4(同:1.1~1.8)、陰性尤度比は0.1(同:0.0~0.7)だった。
減速バンプは、痛点の移動や反跳圧痛などの他の臨床的特徴より、感度と陰性尤度比が良好であった。
Ashdown氏は、「減速バンプ上を通過した時の痛みは、急性虫垂炎の可能性が高いことと関連している。診断で一般に用いられる他の特徴的所見に匹敵する診断指標である。減速バンプ上の通過についての質問は、臨床評価に寄与する可能性があり、電話での患者評価には有用であろう」と報告した。