敗血症性ショックは敗血症の最も重篤な病態であり、フランスではICU治療の約9%を占め、短期的な死亡率は40~60%に達する。本症では、敗血症に起因する低血圧を正常化するために昇圧治療を要する。最近の国際的ガイドラインでは、ドパミンあるいはノルアドレナリンを第一選択薬とし、奏効が得られない場合はアドレナリンが推奨されているが、これらの薬剤の大規模な比較試験は実施されていない。
フランス研究・高等教育拠点パリ南大学 UVSQレイモン・ポアンカレ病院のDjillali Annane氏らは、敗血症性ショックにおいてノルアドレナリンと必要に応じてドブタミンを併用する治療法とアドレナリン単独の有効性と安全性を比較する試験を実施、その結果を8月25日付Lancet誌上で報告した。
28日目の全原因死亡率は両治療群間で同等
本研究はプロスペクティブな二重盲検多施設共同無作為化試験であり、フランス国内の19のICUに収容された敗血症性ショック330例がアドレナリン単独群(161例)あるいはノルアドレナリン+ドブタミン必要時併用群(169例)に無作為に割り付けられた。投与量は平均血圧70mmHg以上を維持するように調整された。
主要評価項目である28日目の全原因死亡率は、単独群40%(64/161例)、併用群34%(58/169例)と、両治療群間で同等であった(p=0.31、相対リスク:0.86)。
重篤な有害事象の発症率も、両治療群間に差はない
両治療群間で、ICU死亡率(p=0.69)、退院時死亡率(p=0.51)、90日死亡率(p=0.73)、血行動態回復までの期間(log-rank検定:p=0.67)、昇圧治療中止までの期間(log-rank検定:p=0.09)、SOFAスコア(敗血症に伴う臓器障害の指標)の推移に有意な差は認めなかった。重篤な有害事象の発症率についても、両治療群間に差はなかった。
以上により、Annane氏は「敗血症性ショックの管理において、アドレナリン単独治療とノルアドレナリン+ドブタミン必要時併用治療の有効性および安全性は同等」と結論している。
また、「臨床の場では、心係数が低下している敗血症性ショックに対する昇圧治療としては、アドレナリン、ノルアドレナリン、ノルアドレナリン+ドブタミンのいずれを施行してもよい。今後は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミンの単独治療の有効性と安全性を比較し、敗血症性ショックにおける昇圧治療の最適な血行動態目標値を明確にすべき」と指摘している。
(菅野 守:医学ライター)