糖尿病患者の主要な死因とされる心血管疾患だが、急性冠動脈症候群(ACS)後の死亡に関する糖尿病との関連については明確にされていない。そこで米国コーネル大学メディカルセンターのSean M. Donahoe氏らが、ACS後の糖尿病患者の死亡リスクについて検証した。JAMA誌8月15日号の報告から。
ACS患者62,036例を検証
対象としたのは、1997年~2006年の間にThrombolysis in Myocardial Infarction(TIMI)研究グループによって行われた11の無作為化臨床試験に登録されたACSを呈した患者62,036例。内訳はST上昇心筋梗塞患者46,577例(STEMI症例群)、不安定狭心症/非ST上昇心筋梗塞患者15,459例(UA/NSTEMI症例群)。また糖尿病患者は両群にわたって10,613例(17.1%)いた。
主要評価項目は、糖尿病患者 vs 非糖尿病患者のACS後30日および1年死亡率。
不安定狭心症/非ST上昇心筋梗塞後の死亡リスクが最も高い
糖尿病患者 vs 非糖尿病患者の30日死亡率は、STEMI症例群では8.5% vs 5.4%(P<0.001)、UA/NSTEMI症例群では2.1% vs 1.1%(P<0.001)で、いずれも糖尿病患者で有意に高かった。
また多変量モデリング(ACSイベントの基線特徴、所見、処置因子を調整)の結果、UA/NSTEMI症例群で糖尿病とのより高い関連が示された(STEMI vs UA/NSTEMIオッズ比;1.40 vs 1.78)。
1年死亡率の対比でも、UA/NSTEMI症例群で糖尿病とのより高い関連が示された(STEMI vs UA/NSTEMIハザード比:1.22 vs 1.65)。
なお、UA/NSTEMIを呈した糖尿病患者とSTEMIを呈した非糖尿病患者との1年死亡率の値が非常に接近していることが見て取れた(7.2% vs 8.1%)。
Donahoe氏らは、「ACS治療の進展にもかかわらず、糖尿病は予後に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。本研究の結果は、このハイリスク集団に対する虚血性心疾患マネジメントの積極的な戦略の重要性を強調するものだ」と結論付けた。
(武藤まき:医療ライター)