古くから論争になっているテーマだが、生理食塩水vsアルブミン輸液評価研究グループ(SAFE:Saline versus Albumin Fluid Evaluation)は、SAFEスタディに登録された外傷性脳損傷患者の事後を追跡調査し、その死亡率が、アルブミン輸液で蘇生された患者のほうが生理食塩水で蘇生された患者より高いことが示唆されたと報告した。NEJM誌8月30日号掲載より。
460例の外傷性脳損傷患者を追跡調査
外傷性脳損傷患者(外傷既往あり、CT断層撮影による頭部外傷の所見あり、かつグラスゴー昏睡尺度(GCS:Glasgow Coma Scale)スコア13以下の患者について、症例報告書、カルテ、CTスキャンからベースライン特性を記録して無作為化し、24ヵ月後に生命予後と身体機能の神経学的転帰を判定した。
追跡調査したのは460例。アルブミン投与群231例(50.2%)、生食投与群229例(49.8%)だった。
アルブミン投与の重篤な外傷性脳損傷患者ほど死亡率が高い
追跡24ヵ月後、死亡例はアルブミン投与群214例の患者のうち71例(33.2%)に対し、生食投与群では206例中42例(20.4%)だった(相対リスク1.63、95%信頼区間1.17-2.26、P = 0.003)。
GCS スコア3~8の患者を重篤な脳損傷患者と分類したサブ解析の結果(内訳はアルブミン投与群160例(69.3%)、生食投与群158例(69.0%))、この重篤な脳損傷患者群では、アルブミン投与群146例中61例(41.8%)が死亡したのに対し、生食投与群で死亡したのは144例中32例(22.2%)だった(同1.88、1.31-2.70、P<0.001)。
GCSスコア9~12の患者群では、アルブミン投与群50例中8例(16.0%)が死亡、生食投与群は37例中8例(21.6%)だった(同0.74、0.31-1.79、P = 0.50)。
研究グループは、この事後研究によって、重篤な外傷性脳損傷患者では生食輸液蘇生よりもアルブミン輸液蘇生によるほうが死亡率が高いことが判明したと結論付けた。
(朝田哲明:医療ライター)