カリウム摂取量を増やすことで成人高血圧患者の血圧が低下するとともに、血中脂質濃度やカテコラミン値、腎機能には有害な影響はないことを示す質の高いエビデンスが得られたとする研究結果を、世界保健機関(WHO)のNancy J Aburto氏らの研究グループが、BMJ誌オンライン版2013年4月5日号で報告した。脳卒中のリスクも24%低下したという。カリウム摂取量が少ないと血圧上昇、高血圧、脳卒中のリスクが増加し、多ければこれらの疾患は予防される可能性が指摘されている。一方、カリウム高摂取が血圧や心血管疾患に及ぼす良好な効果に関するデータにはばらつきがあり、血中脂質濃度、カテコラミン値、腎機能に及ぼす有害な作用のデータも十分ではない状況だ。
カリウム摂取が健康に及ぼす影響をメタ解析で評価
研究グループは、カリウム摂取が健康に及ぼす影響に関する知見の不足を補うために、文献の系統的レビューとメタ解析を行った。
データベースと既報の総説の文献一覧に当たり、カリウム摂取が血圧、腎機能、血中脂質濃度、カテコラミン値、全死因死亡、心血管疾患、脳卒中、冠動脈心疾患に及ぼす影響を検討した無作為化対照比較試験およびコホート試験を選出した。
2名の研究者が別個に試験の評価を行い、患者背景および転帰のデータを抽出した。カリウム高摂取の影響を評価するために、逆分散法とランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った(平均差またはリスク比と、その95%信頼区間[CI]を算出)。
非高血圧患者では降圧効果なし
血圧、血中脂質濃度、カテコラミン値、腎機能について検討した22件の無作為化対照比較試験(1,606例)および成人の全死因死亡、心血管疾患、脳卒中、冠動脈心疾患の検討を行った11件のコホート試験(12万7,038例)がメタ解析に含まれた。
カリウム摂取の増加により、成人の高血圧患者で血圧が3.49(95%CI:1.82~5.15)/1.96(同:0.86~3.06)mmHg低下したが、非高血圧患者ではこのような効果はみられなかった。
カリウム高摂取群(90~120mmol/日≒3,500~4,700mg/日)では収縮期血圧が7.16(95%CI:1.91~12.41)mmHg低下したが、用量反応は認めなかった。カリウム摂取の増加が、成人の腎機能、血中脂質濃度、カテコラミン値に有害な作用を及ぼすことはなかった。
カリウム摂取と脳卒中の発症リスクは有意な逆相関を示し、高摂取によりリスクが24%低下した(リスク比:0.76、95%CI:0.66~0.89)。心血管疾患(同:0.88、0.70~1.11)や冠動脈心疾患(同:0.96、0.78~1.19)との間には有意な関連はなかった。
小児では、3件の無作為化対照比較試験と1つのコホート試験において、カリウム摂取の増加により収縮期血圧が0.28(95%CI:-0.49~1.05)mmHg低下するが有意差はないことが示唆された。
著者は、「カリウム摂取量の増加により成人の高血圧患者の血圧が低下し、血中脂質濃度、カテコラミン値、腎機能には有害な作用はないことを示す質の高いエビデンスが得られた。また、カリウム高摂取により脳卒中のリスクが24%低下することを示す中等度の質のエビデンスも確認された」とまとめ、「これらの結果は、血圧上昇および脳卒中の予防、管理においては、カリウム摂取量を増やすことで、腎でのカリウム処理を損なわずにベネフィットがもたらされることを示唆する」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)