重症インフルエンザに対し、オセルタミビルを通常の2倍量投与しても、治療効果は通常量投与の場合と同等であったことが示された。東南アジア感染症臨床研究ネットワーク(South East Asia Infectious Disease Clinical Research Network)が、インドネシアなど東南アジア4ヵ国13病院で重症インフルエンザ患者について行った、無作為化二重盲検試験の結果、報告した。BMJ誌5月30日号で発表した。
4ヵ国13ヵ所の病院で326人の患者を無作為化
ガイドラインでは、重症インフルエンザに対し通常量よりも高用量を用いることが推奨されている。同ネットワークはその推奨の妥当性を調べることを目的に、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの13ヵ所の医療機関で無作為化二重盲検試験を行った。
重症インフルエンザの確定診断を受けた1歳以上の入院患者326例を無作為に2群に分け、一方にはオセルタミビルを通常の2倍量(165例)、もう一方には通常量(161例)を投与した。被験者のうち、15歳未満は246例(75.5%)だった。
主要アウトカムは、投与5日目の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法によるウイルスの有無とした。
投与5日目のインフルエンザ陰性率は両群とも約7割
被験者のうち、インフルエンザA型ウイルス感染者は260例(79.8%)、インフルエンザB型ウイルス感染者は53例(16.2%)だった。
5日目にRT-PCR陰性だった割合は、2倍量群が159例中115例(72.3%、95%信頼区間:64.9~78.7)、通常量群が154例中105例(68.2%、同:60.5~75.0)と、両群に有意差はなかった(群間格差:4.2%、同:-5.9~14.2、p=0.42)。
死亡率についても、2倍量群が165例中12例(7.3%)、通常量群が161例中9例(5.6%)と、有意差はなかった(p=0.54)。
酸素補充療法や集中治療室(ICU)での治療、人工呼吸器を利用した日数の中央値も、いずれも両群で有意差はなかった。
著者は「重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルの2倍量投与は通常投与と比べて、ウイルス学的にも臨床的にも利点は認められなかった」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)