性的暴力の被害者は、抑うつや不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を呈する割合が高い。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のJudith K. Bass氏らは、高所得国では、性的暴力による関連症状に対する効果的な治療があるが、専門医療職がほとんどいない紛争地帯の低所得国での、関連症状に対する治療のエビデンス(集団療法vs.個別サポート)について調べた。その結果、集団療法によって、抑うつや不安の軽減と同時に機能改善も図れたことを報告した。NEJM誌2013年6月6日号より。
被害女性を認知処理療法と個別サポートに無作為化
検討は、コンゴ民主共和国で行われた。性的暴力を受け、強いPTSD・抑うつ・不安症状を有する生存女性被害者がいる16村を、認知処理療法(個人セッション1回と集団セッション11回:集団療法群)を提供する村と、個別サポートを提供する村(心理社会的補助者がいつでも相談に応じ、心理社会的支援や医療、経済、法的なサポートサービス利用を支援:個別サポート群)とに無作為に割り付けた。そのうち1つの村は、心理社会的支援者の能力に懸念があり除外され、認知処理療法は7村(157例)に、個別サポートは8村(248例)に行われた。
ベースライン、治療終了時、治療終了6ヵ月後に、(1)抑うつ・不安症状の複合をホプキンス症状チェックリストの平均スコア(範囲:0~3、高スコアほど重症)で、また(2)PTSD症状をPTSDチェックリストの平均スコア(範囲:0~3、高スコアほど重症)で評価し、さらに(3)機能障害について20項目の平均スコア(範囲0~4:高スコアほど障害が重度)の評価を行った。
PTSD、抑うつ・不安、機能障害とも集団療法で改善
3つの評価が完了したのは、集団療法群では参加者の65%、個別サポート群は52%であった。
抑うつ・不安症状の平均スコアは、個別サポート群でも改善したが(ベースライン:2.2、治療終了時:1.7、治療後6ヵ月:1.5)、集団療法群の改善のほうが有意に大きかった(ベースライン:2.0、治療終了時:0.8、治療後6ヵ月:0.7、全比較のp<0.001)。PTSDと機能障害についても同様の変化のパターンが観察された。
治療後6ヵ月で抑うつ・不安症の基準を満たしている可能性が高い人の割合は、集団療法群9%、個別サポート群42%だった(p<0.001)。PTSDも同様の結果が示された。
これらの結果を踏まえて著者は、「今回検討した紛争地帯の低所得国における性的暴力被害者は、集団心理療法によってPTSD症状と抑うつ・不安症状が軽減し、機能改善も図れた」と報告している。