乳児の急性細気管支炎の治療について、ラセミ体アドレナリン(商品名:ボスミン)吸入は、食塩水吸入よりも有効でなかったことが示された。一方で、吸入治療戦略に関して、固定スケジュールよりも必要に応じて行うオンデマンド吸入が優れていると考えられることも明らかになった。ノルウェー・オスロ大学病院のHavard Ove Skjerven氏らが、多施設共同無作為化試験の結果、報告した。乳児の急性細気管支炎は大半はRSウイルスが原因で、入院率が高く換気補助を必要とし、致死的なこともある。治療では気管支拡張薬の使用は推奨されておらず、食塩水吸入の治療が行われることが多いが、吸入治療の効果の可能性については、薬剤の種類、投与の頻度に関するコンセンサスは得られていないのが現状であった。NEJM誌2013年6月13日号掲載の報告より。
アドレナリン吸入vs.食塩水吸入、オンデマンドvs. 固定スケジュールを検討
研究グループは本検討において、急性細気管支炎で入院した乳児を対象に、ラセミ体アドレナリン吸入療法が食塩水吸入療法よりも優れているとの仮定を検証すること、また吸入治療の頻度に関する戦略[オンデマンドvs. 固定スケジュール(最高2時間ごと)]の評価を行うことを目的とした。
2010年1月~2011年5月にノルウェー南東部にある8施設で2×2因子無作為化二重盲検試験を行った。対象は、中等度~重度(0~10評価の臨床スコアが4以上)の急性細気管支炎を有した12ヵ月齢未満児。被験児については、酸素療法、経鼻胃管栄養、換気補助の利用についても記録を行った。
主要アウトカムは、入院期間で、intention-to-treat(ITT)解析にて評価した。
投与戦略は、オンデマンドが固定スケジュールよりも優れる
試験対象児は404例だった。平均年齢は4.2ヵ月、59.4%が男児であった。
入院期間、酸素療法・経鼻胃管栄養・換気補助の使用、臨床スコアのベースライン(吸入療法前)からの相対的改善は、ラセミ体アドレナリン吸入群と食塩水吸入群で同程度だった(すべての比較のp>0.1)。
一方、頻度の比較においては、オンデマンド群のほうが固定スケジュール群よりも、入院期間が有意に短縮した(p=0.01)。入院期間は、オンデマンド群47.6時間(95%信頼区間[CI]:30.6~64.6)、固定スケジュール群61.3時間(同:45.4~77.2)だった。
また、オンデマンド群のほうが有意に、酸素療法の使用が少なく(38.3%vs. 48.7%、p=0.04)、換気補助の使用も少なく(4.0%vs. 10.8%、p=0.01)、入院期間中の吸入療法投与の頻度が少なかった(12.0回vs. 17.0回、p<0.001)。
これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の急性細気管支炎の治療において、ラセミ体アドレナリン吸入は、食塩水吸入よりも優れていなかった。一方、吸入治療はオンデマンド戦略が固定スケジュール戦略よりも優れていると思われる」と結論している。