果物摂取と2型糖尿病リスクとの関連性について、果物の種類によって差があること、また果物そのものよりもジュースのほうがリスクは高いことが、米国・ハーバード大学公衆衛生学部のIsao Muraki氏らの検討で明らかとなった。多くの慢性疾患の一次予防で果物の摂取が推奨されているが、疫学調査では2型糖尿病に関して相反する結果の報告があるという。これらの不一致は、果物の種類や被験者の背景因子などの違いで説明可能とされるが、その検証は十分には行われていなかった。BMJ誌オンライン版2013年8月28日号掲載の報告。
10種の果物につき、約18万8,000人の医療従事者のデータを解析
研究グループは、果物の種類によって2型糖尿病の発症リスクが異なるかを検証するために、医療従事者を対象とした3つの大規模な縦断的前向きコホート試験のデータの解析を行った。
Nurses’ Health Study(1984~2008年)、Nurses’ Health Study II(1991~2009年)、Health Professionals Follow-up Study(1986~2008年)の参加者のうち、ベースライン時に慢性疾患(2型糖尿病、心血管疾患、がん)がみられなかった者を対象とし、それぞれ6万6,105人(女性)、8万5,104人(女性)、3万6,173人(男性)について解析を行った。
食品摂取頻度質問票を用いて、標準的な1食分(1サービング)の果物(10種)の摂取状況を調査した。被験者は、9つの選択肢(「まったく食べないか、<1食/月」から「≧6食/日」まで)から1つを選んで回答した。ジュースはリンゴ、オレンジ、グレープフルーツなどについて調査した。
2型糖尿病の診断を受けたと答えた被験者には、症状、検査値、糖尿病治療薬に関する補足的な質問票を送付し、その回答に基づいて診断を確定した。
ブルーベリー、ブドウ、リンゴに予防効果
346万4,641人年当たり1万2,198人が2型糖尿病を発症した。果物の総摂取量で5群(<4食/週、4〜6食/週、1食/日、2食/日、≧3食/日)に分けて解析したところ、摂取量の増加と2型糖尿病リスクの低下には相関が認められ、3食/週増加するごとにリスクが有意に低下した(調整統合ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.96~0.99、p=0.002)。年齢で調整すると、すべてのコホートで個々の果物の摂取と2型糖尿病リスクとの逆相関の関連が認められた(p<0.001)。
個々の果物で相互調整を行い、それぞれ摂取量で5群(<1食/月、1〜3食/月、1食/週、2〜4食/週、≧5食/週)に分け、3食/週増加するごとの糖尿病リスクのHRを算出した。結果は、HRが低い順(糖尿病リスクの低下が大きい順)に下記のとおりで、ブルーベリー、ブドウ・干しブドウ、リンゴ・洋梨、グレープフルーツで糖尿病リスクの有意な低下が認められた。バナナとイチゴには、3つの試験間に有意な異質性がみられた(それぞれp<0.001、p=0.01)。
ブルーベリー0.74(95%CI:0.66~0.83、p<0.001)、ブドウ・干しブドウ0.88(同:0.83~0.93、p<0.001)、プルーン0.89(同:0.79~1.01、p=0.07)、リンゴ・洋梨0.93(同:0.90~0.96、p<0.001)、バナナ0.95(同:0.91~0.98、p=0.002)、グレープフルーツ0.95(同:0.91~0.99、p=0.02)、桃・プラム・アプリコット0.97(同:0.92~1.02、p=0.21)、オレンジ0.99(同:0.95~1.03、p=0.68)、イチゴ1.03(同:0.96~1.10、p=0.46)、メロン(カンタロープ)1.10(同:1.02~1.18、p=0.01)。
果物ジュースについては、摂取量が3食/週増加するごとに、2型糖尿病リスクが有意に増加した(HR:1.08、95%CI:1.05~1.11、p<0.001)。3食/週のジュースを同量の果物に換算すると、2型糖尿病リスクが7%低下し、個々の果物ではブルーベリーで33%、ブドウ・干しブドウで19%、リンゴ・洋梨で14%、バナナで13%、グレープフルーツで12%低下した。
著者は、「ブルーベリー、ブドウ、リンゴの摂取量が多いほど2型糖尿病リスクが低下するのに対し、ジュースの摂取量が多いとリスクは高くなることも示唆された」とまとめ、「果物の種類によるリスクの違いには、グリセミック指数(GI)やグリセミック負荷(GL)との関連はなかった」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)