ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)を達成するには、妊産婦、新生児、子どもの健康に対する介入の実施率の向上が必須であるが、対象国では1990年以降、徐々に改善してはいるものの、貧富の差に基づく実施率の格差は大きいままであることが明らかとなった。Countdown 2008 Equity Analysis GroupがLancet誌2008年4月12日号で報告した。
5つの貧富の段階ごとに、4つの介入領域の実施率を評価
本研究では、過去の動向および今後の展開に対する洞察を提供するために、集約的な指標を用いて主要な介入法の実施率(coverage)の公平性と傾向が評価された。実施率は、「特定の介入を要する集団のうち実際にその介入を受けた人々の割合」と定義され、健康サービスの重要な指標であり、プログラムの進捗状況のモニタリングにおいて不可欠な戦略とされる。
1990~2006年に“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn and Child Survival”構想の対象となった54ヵ国の家庭調査のデータを用いて、4つの介入領域(家族計画、妊産婦・新生児ケア、予防接種、病気の子どもの治療)の総合的な実施率の指標を計算した。4つの領域は指標の計算において同等に重み付けした。貧富の程度を5つの段階に分け、標準測定値を用いて各段階における実施率の差のレベルおよび傾向を評価した。
介入実施率の差は、各国間、国内ともに、わずかしか短縮していない
54ヵ国の最新の調査データでは、最貧困層と最富裕層間の実施率の差は、もっとも小さいタジキスタンやペルーが20%弱、もっとも大きいエチオピアやチャドが70%以上という範囲にあった。4つの介入領域を合わせた平均実施率の差は5段階の最貧困層が54.2%、最富裕層が28.9%であり、全体の平均は43.0%であった。
最貧困層と最富裕層間の差は、妊産婦および新生児医療への介入がもっとも大きく、予防接種がもっとも小さかった。1回以上の調査が行われた40ヵ国では、実施率の差は1990年代初頭以降、毎年、平均0.9%ポイントずつ短縮していた。1995年以降、毎年、2%ポイント以上の差の短縮が見られたのは3ヵ国(コロンビア、モザンビーク、ネパール)のみであった。国レベルの格差のパターンは経時的に確固として持続しており、徐々にしか変化していなかった。
研究グループは、「1990年以降、主要な介入法の実施率はほとんどの国でわずかずつしか進展しておらず、依然として国レベルで大きな差が見られた。MDG4、5の達成に必要な介入の実施率を実現するには、この格差の短縮ペースが現在の2倍以上になる必要がある。国内的にも、富裕層と貧困層の格差のパターンは持続しており、介入のターゲットとすることに重要性が認められる場合でさえ変化はわずかなものであった」と考察している。
(菅野守:医学ライター)