日本発!真皮縫合 vs ステープラー/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2013/10/25

 

 ステープラーによる皮膚縫合は消化器外科での開腹手術後に広く行われている反面、もうひとつの手段である真皮縫合の潜在的な利点については評価されていない。「大阪大学消化器外科共同研究会リスクマネジメント分科会」の辻仲 利政氏らは、真皮縫合とステープラー使用時の手術部位感染、肥厚性瘢痕などの創合併症の頻度を評価し報告した。Lancet誌2013年9月28日号に掲載。

消化管開腹手術後の創合併症と肥厚性瘢痕発症率を比較
 本研究はオープンラベル多施設ランダム化比較試験として、24施設が参加して行われた。適応基準は、20歳以上、臓器機能異常なし、上部消化管または下部消化管の開腹外科手術を施行された患者。手術前に真皮縫合とステープラー群に1:1で割り付けられた。主要アウトカムは手術後30日以内の創合併症発症率、副次アウトカムは術後6ヵ月以内の肥厚性瘢痕発症率とした。

全体の発症は有意差なしも、上部・下部で発症に差
 1,072例が主要アウトカムの、1,058例が副次アウトカムの評価対象となった。真皮縫合群とステープラー群はそれぞれ558例(上部消化管382例、下部消化管176例)、514例(上部消化管413例、下部消化管101例)であった。

 主要評価項目である創合併症発症率は真皮縫合群で8.4%、ステープラー群では11.5%と、全体としては有意な差は確認できなかった(オッズ比:0.709、95%CI:0.474~1.062、p=0.12)。しかしながら探索的データ解析によると、創合併症発症率は下部消化管においては真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群10.2%、ステープラー群19.8%、オッズ比:0.463、95%CI:0.217~0.978、p=0.0301)。

 内訳をみると、表層手術部位感染については、下部消化管において真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群7.4%、ステープラー群15.8%、オッズ比:0.425、95%CI:0.179~0.992、p=0.0399)。表層手術部位感染以外の創合併症発症率については、全体では真皮縫合群で有意に少なく(真皮縫合群2.0%、ステープラー群4.5%、オッズ比:0.435、95%CI:0.189~0.940、p=0.0238)、上部消化管においても真皮縫合群で有意に少ないという結果であった(真皮縫合群1.6%、ステープラー群4.6%、オッズ比:0.331、95%CI:0.107~0.875、p=0.0149)。

 副次アウトカムである肥厚性瘢痕の発症率については、全体では真皮縫合群で有意に少なく(真皮縫合群16.7%、ステープラー群21.6%、オッズ比:0.726、95%CI:0.528~0.998、p=0.0429)、上部消化管においても真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群17.3%、ステープラー群23.7%、オッズ比:0.672、95%CI:0.465~0.965、p=0.0282)。

 サブセット解析では、男性、下部消化管手術、手術時間220分以上、手術後の抗凝固療法施行において、真皮縫合群で創合併症リスクが減少していた。また、ほとんどのサブセットにおいて、真皮縫合群で創合併症の頻度が減少していることが証明された。

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コメンテーター : 中澤 達( なかざわ たつ ) 氏

社会福祉法人 聖母会 聖母病院 院長

J-CLEAR評議員