ステント留置後の非心臓手術における危険な患者のタイプ/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/10/30

 

 冠動脈ステント留置術後の非心臓手術における、主要有害心イベントのリスク因子は、非待機的手術入院や術前6ヵ月以内の心筋梗塞、改訂心リスク指標が2超などであることが明らかになった。非心臓手術の実施時期やステントの種類は、同イベント発生との関連については低かった。米国・アラバマ大学のMary T. Hawn氏らによる検討の結果、明らかになったもので、JAMA誌2013年10月9日号で発表された。現行のガイドラインでは、冠動脈ステント留置術後の非心臓手術の実施時期について、薬剤溶出性ステント(DES)は1年後、ベアメタルステント(BMS)は6週間後に延期することを推奨しているが、その根拠となるエビデンスは限られていた。

30日MACE発生率を主要アウトカムに検討

 研究グループは、冠動脈ステント留置後24ヵ月以内に手術を受けた4万1,989例の退役軍人(VA)および非VAの全米患者を対象とした後ろ向きコホート試験を行った。試験は、冠動脈ステント留置後に非心臓手術を受けた患者における有害心イベント発生のリスク因子を特定することを目的とした。

 コホートについて、患者・術式・心リスク因子で補正した主要有害心イベント(MACE)の発生と手術のタイミング・ステントの種類との関連について、非線形一般化加法モデルにより分析し、また、コホート内ケースコントロール試験により、周術期抗血小板薬投与中止とMACEとの関連についても評価した。

 主要アウトカムは、全死因死亡・心筋梗塞・心血行再建術の複合とした術後30日MACE発生率だった。

 対象コホートのうち、冠動脈ステント留置術を受けていたのは12万4,844例(DES:47.6%、BMS:52.4%)だった。そのうち術後24ヵ月以内に非心臓手術を受けていたのは2万8,029例(22.5%、95%信頼区間[CI]:22.2~22.7%)で、うち術後30日MACE発生例は1,980例(4.7%、95%CI:4.5~4.9%)だった。

非待機的手術入院でMACEリスクは4.8倍に

 ステント留置術を実施してから非心臓手術をするまでの期間が短いほど、MACE発生率は高く、6週間未満では11.6%、6週間~6ヵ月は6.4%、6~12ヵ月は4.2%、12~24ヵ月は3.5%だった(p<0.001)。

 ステントの種類では、DESを使用した人の同発生率は4.3%で、BMSを使用した人の5.1%に比べて低率だった(p<0.001)。

 補正後、MACE発生に最も関連していた因子は、非待機的手術入院(補正後オッズ比[AOR]:4.77)、術前6ヵ月以内の心筋梗塞(同:2.63)、改訂心リスク指標が2超(同:2.13)だった。

 モデルに含まれた12変数のうち、「手術の実施時期」は関連性が5番目、「ステントの種類」は最下位と、いずれもMACEとの関連性が低かった。DESはMACEとの関連はみられず(AOR:0.91)、またDES、BMSともに、MACEリスクはステント留置術後6ヵ月以降は安定した。

 284例の適合ペアによるコホート内ケースコントロール分析の結果、抗血小板薬の周術期投与中止とMACE発生との関連は認められなかった(OR:0.86)。

 結果を踏まえて著者は、「DESとBMSのステントタイプおよび手術のタイミングについて強調している、現行のガイドラインについて再評価する必要がある」と提言している。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

専門家はこう見る

コメンテーター : 大野 貴之( おおの たかゆき ) 氏

三井記念病院 心臓血管外科 部長

J-CLEAR評議員