高血糖であっても、グルコキナーゼ(GCK)遺伝子変異のある人は、微小血管性または大血管性合併症の罹患率は低いことが示された。英国・エクセター大学のAnna M. Steele氏らが横断研究を行い、明らかにした。糖尿病の血糖目標値は、合併症リスクを最小限とするために開発されたものだが、GCK遺伝子変異のある人は、出生時から軽度の空腹時高血糖を呈し、その値は1型および2型糖尿病での治療推奨値とほぼ同値であることが知られていた。JAMA誌2014年1月15日号掲載の報告より。
GCK遺伝子変異群、コントロール群、YT2D群で血管合併症罹患率を比較
研究グループは、英国で2008年8月~2010年12月にかけて、
GCK遺伝子変異の認められた99例(年齢中央値:48.6歳)、その家族で
GCK遺伝子変異がなく非糖尿病のコントロール群91例(同:52.2歳)、45歳以下で診断を受けた若年発症型2型糖尿病(YT2D)の83例(同:54.7歳)について、微小血管性または大血管性合併症の罹患率を比較する横断研究を行った。
HbA1c値の中央値は、
GCK遺伝子変異群が6.9%、コントロール群が5.8%、YT2D群が7.8%だった。
分析の結果、臨床的に重大な微小血管性合併症罹患率は、
GCK遺伝子変異群は1%と低く、コントロール群の2%と有意差はなかった(p=0.52)。一方で、YT2D群の同罹患率は36%で、
GCK遺伝子変異群が有意に低率であることが示された(p<0.001)。
糖尿病性網膜症はコントロール群より有意に高率、神経障害、大血管性合併症は同等
糖尿病性網膜症の罹患率は、
GCK遺伝子変異群は30%で、コントロール群の14%に比べ高率であり(p=0.007)、YT2D群の63%より低率だった(p<0.001)。ただし糖尿病性網膜症のレーザー治療を要した人については、YT2D群では28%に上ったが、
GCK遺伝子変異群やコントロール群ではいなかった。
蛋白尿症は
GCK遺伝子変異群やコントロール群では認められず、微量アルブミン尿症の罹患率はそれぞれ1%、2%と低かった。しかしYT2D群では、タンパク尿症が10%、微量アルブミン尿症が21%と、
GCK遺伝子変異群に比べ有意に高率だった(p<0.001)。
神経障害についても、
GCK遺伝子変異群、コントロール群ではそれぞれ2%、0%だったのに対し、YT2D群では29%に上った(p<0.001)。
また、臨床的意義のある大血管性合併症についても、
GCK遺伝子変異群の罹患率は4%と、コントロール群の11%と有意差はなかった一方で、YT2D群の30%に比べ有意に低率だった(p<0.001)。
著者は、「本検討で、
GCK遺伝子変異被験者は、高血糖状態が中央値48.6年続いていたにもかかわらず微小血管性および大血管性合併症の罹患率が低かった。今回得られた所見は、特定の軽度の高血糖リスクへの洞察を深めるものである」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)